異色の新作『水星の魔女』が話題 ガンダムが“冬の時代”を乗り越えて愛され続ける理由新連載:大澤孝「トイクリエイターの発想法」(2/4 ページ)

» 2022年11月06日 10時00分 公開
[大澤孝ITmedia]

 古くは『鉄腕アトム』や『鉄人28号』からスタートし、70年代前半に『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』を中心とするヒーローとしてのロボットが大ブームとなった。

 玩具の世界でもロボットは商品化しやすいモチーフであり、合体変形や武器の発射など魅力的なギミックを搭載したものは売れに売れ、アニメの人気をさらに加速させることとなった。このころから玩具メーカーがロボットアニメのメインスポンサーとして参加しはじめ、アニメ企画そのものにも多大な影響を与えることになっていった。

黎明期を支えたロボットたち(出所:バンダイ発表のプレスリリース)

 そして1979年に放映されたファーストをきっかけに、ロボット=戦いの道具として描かれるアニメが80年代前半に全盛期を迎えることとなる。『超時空要塞マクロス』『装甲騎兵ボトムズ』など、ガンダムに勝るとも劣らない名作たちが誕生した、今思うと奇跡のような時代であった。

 当時を思い起こせば、確かにガンダムは圧倒的な人気があったものの、子どもたちの間では瞬間風速的にガンダムを超える人気を獲得したものも多かった。例えば“リアルさの追求”という面では、ボトムズはガンダムをさらに突き詰めており、ミリタリーチックなAT(アーマードトルーパー)の造形的な魅力は、多くのプラモ少年を強く引きつけていた。また、主人公が迷わず機体を乗り捨てたり、特定の専用機を持っていなかったり、また4メートルというイメージしやすいサイズ感やローラーでの走行など、本当に存在するのでないかと思えるほどのリアリティーは、ガンダムとはまた違った魅力を放っていた。

 こうして隆盛を迎えたロボットアニメだが、やがてファミコンブームの到来とともに徐々に衰退し、『新世紀エヴァンゲリオン』などの一部のヒット作を除けばマイナーな存在となっていた。あれほど輝きを放っていたガンダム以外のロボットコンテンツは「懐かしい」ものとなってしまい、なかなか見かけなくなってしまった。

 バンダイナムコホールディングスの決算資料によると、ガンダム関連の売り上げは1000億円超にのぼるという。生誕40年を超えるコンテンツが今なお成長を続けているのは、ロボットアニメという枠を取り払っても、なかなか珍しいといえるだろう。

IPとしては『ドラゴンボール』と双璧をなすガンダム(出所:バンダイナムコホールディングス「2023年3月期第1四半期決算短信 補足資料

 では、なぜガンダムは今でも成長を続けているのだろうか。ここからはロボットアニメという枠を離れ、ほぼ“同期”のスター・ウォーズと比較してみよう。

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