北総鉄道が値下げしても、スカイライナーは“そのまま”のワケ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
ところで、スカイライナーは値下げにならない。スカイライナーは京成上野・日暮里と成田空港・空港第2ビルを結ぶ。営業キロは63.1キロメートル。北総線区間はその約半分の32.3キロメートルだから、北総線の運賃が下がればスカイライナーも値下げだろうと考える。しかし京成電鉄のサイトには値下げの告知がない。なぜ京成はスカイライナーを値下げしないか。その理由は「スカイライナーの運賃はすべて京成電鉄の売り上げ」だから。北総線の運賃はもともと含まれていないから、値段を下げようがない。
北総鉄道の路線略図
私鉄と地下鉄のような相互直通運転の場合、私鉄から地下鉄内へ向かうきっぷを買うと、双方の運賃を合算する。私鉄に乗るときに初乗り運賃がかかり、地下鉄に入ると地下鉄の初乗り運賃がかかる。割高だけど会社が変わるから仕方がない。ほとんどの相互直通運転はこの枠組みだ。
しかしスカイライナーの場合は違う。スカイライナーは「北総線の線路を借りて走る」という仕組みだ。京成電鉄が運賃を総取りするかわりに、北総鉄道に線路使用料を払う。線路使用料は車両の数や列車の運行本数で決まるから定額だ。スカイライナーが満員でもガラガラでも、北総鉄道の取り分は同じ。ただし、それは運賃と比較してわずかな額だといわれている。JR貨物がJR旅客会社の線路を借りて走る枠組みと同じだ。利益の分配ではない。
京成電鉄のプレスリリースにも北総線との関係が現れる。赤い線を引いた部分、成田スカイアクセスは京成線扱いだけど北総線部分は対象外になる。青い線を引いた部分か、京成線各駅と表記しつつ、わざわざ「北総線の駅を除く」と明記している。ふだんは京成電鉄と見なす場合もあるから明記する必要がある(出典:京成電鉄、全線一日乗車券「京成線ワンデーパス」を発売します!、赤線と青線は筆者が付加)
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