なぜスシローやかっぱ寿司で不祥事が? 業界を苦しめる「安かろう、良かろう」戦略と過剰な期待長浜淳之介のトレンドアンテナ(7/7 ページ)

» 2022年11月09日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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いつまで低価格を維持できるのか

 参考として、グルメ回転寿司である銚子丸についても言及しよう。従来は100円回転寿司の顧客単価が1000円なのに対して、グルメ回転寿司は1500円ほどといわれてきた。この価格差は消費者には響いた。うまいと評判の銚子丸でも、デフレでは成長できていなかった。しかし、コロナの影響は軽微で、値上げによって特にスシローやくら寿司の価格がグルメ回転寿司に接近してきた現状なので、久々にチャンスが巡ってきた感がある。

スシローのマグロ

 スシローは10月から、1皿の値段が120〜150円、180〜210円、360〜390円と3つの価格帯になった。

 くら寿司も10月から、1皿の値段が115円と165円になった。9月まであった220円の価格帯が廃止になったので、値下げの要素もあるのだが、最低価格が上がったから消費者からは値上げと受け止められている。

くら寿司、極み熟成まぐろ

 一方、はま寿司は6月に平日99円がなくなったものの、基本1皿110円を維持。ただし165円や319円の商品も結構ある。

はま寿司のマグロ

 かっぱ寿司も、9月より110円皿の商品を30品増やしている。165円、220円、330円の商品もある。

かっぱ寿司のマグロ

 魚べいは、都心部店を除き大半が110円。まぐろは120円、1貫なら60円だ。都心部店は最低120円になる。

魚べいのマグロ

 現状は、値上げに踏み切ったスシローとくら寿司より、1皿110円にこだわる、はま寿司、かっぱ寿司、魚べいのほうが集客が良く映る。マイナスイメージにつながる報道があっても、安いという理由で、かっぱ寿司を選ぶ消費者は多いようだ。

 しかし、身を削っての奉仕にどこまで耐えられるか。顧客志向は良いことだが、無理な価格維持は新たな問題を引き起こさないか、杞憂に終わればよいが。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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