この「クラファン戦争」であるが、私は簡潔に以下の2つの要素に注目すべきだと考えている。第一が、当然ながら現在も進行中のグローバル化とIT革命の恩恵が活用されているという点だ。
まずクラウドファンディングをするためには、その社会にインターネットにアクセスできる環境が整っていなければならない。ウクライナやロシアは、すでにグローバル化によって「ヒト・モノ・カネ」の移動が比較的自由になっており、SNSなどで気軽に資金を募集できるようになっている。
この視点は2010年代の中東アラブ地域の民主化運動(いわゆる「アラブの春」)の時からも指摘されていたことだ。スマホとSNSの普及で、デモ運動が短期間で多数の人間を集められるようになった上、拡大しやすくなったことで、同様のことがウクライナ軍への民間人からの支援でも指摘できる。
しかも今回の場合は、国境を越えて資金が集まっているという点に大きな特徴がある。これは端的に言って、現代のIT化された社会そのものが戦争に関わっているということだ。
今回のウクライナ軍支援のためのクラウドファンディングの特徴は、それが個人の資金提供者たちにバーチャルな形で「一緒に戦争を戦っている」という感覚を演出しようとしている点だ。
例えば、NGO団体が運営するウクライナ支援のクラファンサイト「Sign My Rocket」では、資金提供者に、資金提供者に、米軍がウクライナに提供しているM777榴弾砲の砲弾の側面などにロシア兵宛の好きなメッセージを書き、実際に使用したシーンを撮影した動画を2000ドルほどで提供してくれる(?)サービスもある。
以前のコラムで、これによって戦争がより個人レベルの精神にインパクトを与えると書いた。今回の場合は資金提供した個人が「一緒に戦っている」という満足感も得られる構造になっている点が、実に新しい部分だといえる。
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