リテール大革命

20歳以上ですか? トライアルの店内で、この言葉が聞かれなくなる理由「実証実験」の結果(3/4 ページ)

» 2022年11月18日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

「顔認証」導入で苦労したこと

 脇田店は小型店舗なので、スマートショッピングカートは導入していない。というわけで、お客はセルフレジを使う必要があって、商品を1つずつスキャンしなければいけない。ひと手間かかるわけだが、顔認証をすることによって会員カードやスマホのアプリを出さずに決済することができる。このことが「心地いい」というのだ。

 顔認証を運営している中で、どんな苦労があったのだろうか。永井さんによると、大きくわけて2つあったという。1つめは「マスク」だ。日常生活において、まだまだマスクを着用している人は多い。マスクをしたままで、顔をうまく認証できるのかといった課題を抱えていた。

 認証されなかった場合は、画面にエラーの文言が表示されるわけだが、「これまでのところ成功率は高いですね。エラーがでても、もう一度試してもらえると、うまく認識されるケースが多いです」(永井さん)

曰佐店でも実証実験を行っている

 2つめは「光」である。セルフレジは店の入口付近に設置しているので、太陽の光が差し込む時間帯がある。そうすると、どうしても逆光によって、うまく認識されないことがあった。ただ、このことも事前に想定していて、カメラの角度などを調整することによって、問題なく認証されるようになったという。

 顔認証はいまのところ大きなトラブルがないので、他店での普及も考えているようだが、この実証実験で、トライアルはもう1つ大きなことに取り組んでいる。売り場カメラと電子棚札が連動する「自動値下げ」だ。

 総菜や弁当などが売れ残っていると、店のスタッフがシールをペタペタと貼っていく。「20%引き」「半額」といった文言が書かれたシールを貼っていくので、目当ての商品に貼られるのを待ってから購入したことがある人もいるはず。脇田店のほかに10月からは曰佐店(福岡市)でも、過去のデータを踏まえてAIが売れ残るかどうかを判断し、電子棚札の表示を変更(値下げ)しているのだ。

「自動値下げ」を導入

 ちなみに、他の某大手スーパーの話になるが、値下げシールを貼る人のことを「シールマン」と呼んでいる。彼ら・彼女らは製造日時などから、どのタイミングで値下げをするかを判断して、シールを貼っていく。トライアルではこの作業をなくそうとしているので、将来的にはそのぶんの人件費が浮くことになる。

 顔認証と自動値下げのシステムを導入することによって、人件費はどのくらい削減できたのだろうか。脇田店の売場面積は300坪ほど。この広さと同じくらいの店舗を比べた場合、「25%」減らすことができたそうだ。

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