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リストラを礼賛する経営者たち──魅惑の「雇用の流動性」は何を引き起こすのか河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)

» 2022年11月25日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

半数以上は黒字企業 「希望退職」という美しい名のリストラ

 「日本は解雇規制が厳しすぎる、流動性がない」と主張する経営層は少なくありません。「解雇規制を緩和すべし、流動性を高めるのが先決、そうしないと経済成長はない!」と鼻息を荒くし、「流動性を高めれば賃金が上がる!」と、とにもかくにも「簡単に切れる」状況を望むのです。

 しかし現実をみれば、日本の解雇規制が厳しいからといって、事実上はリストラができないわけじゃない。ましてや黒字リストラも珍しくありません。

 2018年には、NECは3000人削減。三菱UFJフィナンシャル・グループは9500人分、三井住友フィナンシャルグループは4000人分、みずほフィナンシャルグループは1万9000人分の「業務量」削減などと、50代社員をターゲットに「リストラの嵐」が吹き荒れました。さらにコロナ禍が直撃した20〜21年の上場企業の早期・希望退職が拡大したのはご承知の通りです。

 早期・希望退職の実施企業は2年連続で年間80社以上にのぼり、2年間の募集人数は3万4527人と3万人を超えました。これはリーマン・ショック直後の09年〜10年の合計3万5173人に迫る高水準規模でした。

20〜21年、早期・希望退職の実施企業は年間80社以上に(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 また、22年1〜9月に早期・希望退職者の募集が判明した上場企業は、33社(募集人数5000人)にとどまるものの、実施企業の半数以上は黒字です。

 解雇規制が厳しい、解雇のハードルが高い、といわれるこの国で、これだけの人たちが「希望退職」という美しい言葉の名のもとに仕事を打ち切られている。しかも、“事業再編”という名目の黒字リストラは、一般化しているといっても過言ではありません。

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