メタバースは「次のインターネット」にあらず 吉本と米エンタメ業界が攻める「マルチバース」に商機あり世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2022年11月25日 07時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]

マルチバースの注目株、Sento社

 メタバース関連企業「Sento社」を2022年9月に日本で立ち上げた米国人で日本在住のサンディープ・カシ氏は「メタバースは次世代のインターネットであり、カメラから、インフラ、IoT、AI、マシンラーニング、ポスプロ、配信、エンドデバイスまでを、新しい革新的なプロトコルでつなげるものであるべき。配信元から受信先を遅延なく、高速でセキュリティを担保して送受信でき、エンタテイメントのみならずACME(Agriculture、Construction、Medicine、Engineering=農業、建設、医療、エンジニアリング)といった領域にも活用できる」と話す。

カシ氏が立ち上げたSento社(画像:Sento公式Webサイトより)

 カシ氏の経歴は興味深い。米ジェネラル・モーターズのシステムエンジニアとして、同社のメタバースを活用した自動車デザインの担当を経て、『スターウォーズ』シリーズで知られる映画監督のジョージ・ルーカス氏のルーカスフィルムでグラフィックスの分散化レンダリングシステムのアーキテクチャを設計した。『ジェラシックパーク』『スターウォーズ』『タイタニック』など数多くの有名映画に携わってきたという。

 1993年、ジョージ・ルーカス氏は南カルフォルニア大学に「ETC」を設立した。「ETC」は、映画芸術学部内にある中立的なシンクタンクだ。

 ルーカスフィルムやパラマウント・ピクチャーズ、ユニバーサル・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザーズ・ピクチャーズ、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、エピック・ゲームズ、ドルビーラボラトリーズなどのCTO(最高技術責任者)ら幹部がボードメンバーを務めている。ETCの使命の一つは、オープン・マルチバースの標準化を創ることであり、そのためにカシ氏もETCのボードメンバーに就任している。

 メタ社によって定義された「メタバース」は閉鎖的なプラットフォームだ。一方で、ETCは「マルチバース」という言葉を用い、数多くのメタバースを相互につなぐひとつの「インターネット」を構築しようとしている。

 カシ氏が「CMO(チーフ・メタバース・オフィサー)」を務めるSento社は、実は、吉本興業ホールディングスが、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を通じて立ち上げた企業である。吉本興行は今後、マルチバースの世界に進出していくことを見据えているという。

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