カシ氏は、「RoninX」という非営利法人も設立している。同法人は、カメラメーカーやインフラ、製作会社間の標準化を促進することが目的で、「Integrated Real-Time Protocol」と呼ばれるオープンメタバースのためのプロトコルの開発をETCと協働する。
Sento社は日本市場におけるオープンなメタバースで重要な役割を担い、日本のアニメ制作会社、ゲーム開発会社、放送局、その他メディアや広告代理店とのパートナーシップ構築をしていく予定だ。同社によれば、「2025年に開催予定の『Expo2025(大阪万博)』に向けて、日本で最初のマルチバースの構築を目指す」という。
そこから、エンターテインメントやエデュテインメント(楽しみながら学ぶジャンル)を始め、数多くのコンテンツを展開するプラットフォームとして、マルチバースを広めていきたいと考えているようだ。
「この標準規格により、オープンマルチバースにおける革新的なユースケースとマネタイズモデルを実現することができます」と、カシ氏は言う。インターネットを普及させた「TCP/IP」のような、RoninXのマルチバースの標準規格を使えば、現在のメタバースはさらに進化し、マルチバースとして本当の意味での「次のインターネット」になるということだ。
こう聞くとなんだか夢物語のようにも聞こえるが、Sento社によれば「パラマウント・ピクチャーズ、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザーズ・ピクチャーズ、ユニバーサル・ピクチャーズ、エピック・ゲームズ、アクティビジョンがそれぞれ作るオープンマルチバースが、次世代のインターネットとなります。RoninXとETCは、日本のカメラメーカーとハリウッドのスタジオと共同でマルチバースを創るためのワーキンググループを組成し議論を始めています。そして2023年半ばまでにマルチバースのプラットフォームとなる標準化プロトコル『SentoPlex-Powered by StreamoniX』のローンチを計画しています」と、話す。
また、米国放送規格委員会(ATSC)ともオープンメタバースの相互運用標準の協議が始まっているという。米国では、メタバースがマルチバースに進化していく下地がすでに出来つつあるようだ。
カシ氏はこうも述べている。「われわれのオープンマルチバースによって、ユーザーは適切な価格でサービスを利用できるようになり、クリエイターやコンテンツホルダーはきちんと報酬が得られるようになります」
マルチバースの世界は、本当の意味での「次世代のインターネット」として、今私たちが使っているインターネットと同様に、人々の生活をより豊かにしてくれるかもしれない。
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、著書に『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。最新刊は、『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文藝春秋)。Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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