保育園での虐待、替え玉受検……「密室」で起きる悪事をどう防ぐべきか?マネジメントの手立ては(1/4 ページ)

» 2022年12月12日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 保育園で起きた園児への虐待、大学のゼミ生募集で女子学生を優先するハラスメント、就活での適性診断テスト替え玉受検―――。最近ニュースになったこれらの事件には、明るみに出るまで外界と隔離され、目に触れることのなかった“密室”で起きていたという共通点が見られます。

 一方、職場では、テレワークや副業などによって会社と物理的に切り離され、社員の様子が見えない密室機会が増える傾向です。これからの職場運営において、それら密室とどう向き合えば良いのか? いま会社には、新たな課題が突きつけられています。

密室を適切にマネジメントする方法とは。画像はイメージ(ゲッティイメージズ)

 「自分の子も、その保育士が見ていたかもしれないと思うとショックで…」

 日テレNEWSは12月2日、そんな保護者の声とともに静岡の保育園で起きた園児への虐待事件について報じました。

 「足をつかみ宙づり」「カッターナイフで脅す」「倉庫などに閉じ込め」など、虐待行為の内容も伝えられています。被害に遭った園児たちが受けた恐怖や心身の苦痛、心に受けた傷などを思うと胸が張り裂けそうです。そして、保護者はもちろん、園児たちの保育に日々真摯(しんし)に向き合っている他の保育士にとっても絶対に許せない事件に違いありません。

抑止力が効かない「密室」

 この事件の最大の問題は、保育士として不適格な者たちが保育に当たっていたことです。ただ、例えば公園のようなオープンな場所なら人目が気になることが抑止力になったり、虐待行為が起きても大声を上げて周囲の人がそれを聞きつけたり、見かけた人が通報してくれる可能性があります。しかし、保育の場が外界と切り離された密室だと、抑止力は働きづらく、虐待行為が起きたとしても幼く非力な子どもたちは抗いようがなく、救われる術がないことも大いに問題です。

 帝京大学の教授がゼミ生募集を巡って差別的な対応をした事件では、応募した男子学生のことを女子だと勘違いした教授が、「男子には内緒ですが、女子は基本的には応募=採用です」と返信した内容がSNSで晒(さら)されました。

男子学生に届いた男性教授からの返信(投稿を基に編集部で作成)

 このようなやり取りが起きてしまうのも、この教授自身が教育者として不適切な思考をしていることが根本的な理由に違いありません。ただ、返信文面に「男子には内緒ですが」とあるように、平然と不適切なやりとりが行われてしまった背景としては、応募者と教授だけの閉ざされた空間、即ち密室だったことが関係していたと思います。

 そして、同じく世間を騒がせることとなった、就活の替え玉受検。こちらはコロナ禍で採用選考のオンライン化が進み、就活生が自宅という、他人の目から切り離された密室で受検することになったために魔が差して生じた事件だと言えます。

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