スーパーで服が買われない時代に、ベイシアがアパレル新ブランドを立ち上げた理由磯部孝のアパレル最前線(3/3 ページ)

» 2022年12月13日 05時00分 公開
[磯部孝ITmedia]
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 話を戻そう。共働き世帯が増え、忙しさが増した現代人にとって、「買い物」は一度で済ませるに越したことがないはずだ。それなのに、日本チェーンストア協会加盟店のデータからは、食品が伸びる一方で、衣料品の売り上げが落ち込んでいることが分かる。つまり、それぞれ別の店で買い物をしているという見方ができる。

 一見、合理的とは思えないこの行動を多くの人がとる理由は、量販店の衣料品売り場に期待をしていない、興味を持っていないことも一因だろう。

 そんなイメージを覆し、総合スーパーが衣料品売り場に再び足を踏み入れてもらうには、生活者に対して明確なメリットをアピールするしかない。例えば、総合スーパーの強みは、広大な店舗スペースを生かした品ぞろえの幅だろう。この特長を、最大限に活用するのはどうだろうか。

 昨今では、コンビニエンスストアも衣料品などに乗り出しているが、売上至上主義によって生まれる類似商品を集めるケースが多いと感じている。総合スーパーとしては、コンビニ型ではなく、それぞれの地域特性に合ったニーズをくまなく拾い上げ、欠落商品のない品ぞろえを目指すべきだと考えている。

今回の協業は試金石

 ベイシア側から見て、ハートマーケットの取り組みに期待できる効果は、第一に生活者の興味を引く集客策だろう。ユニクロでさえ、「感謝祭」や「誕生祭」といった大きなセールイベントに合わせて、集客対策としてMARNIやJW ANDERSONなどと協業しており、自社にないブランド、メーカーと手を組むのは有効だ。

出所:ベイシア公式Webサイト

 もう一つ注目したいのは「同郷企業」であること。流行に左右されるファッションにおいて、地域色を出すのはなかなか難しいのだが、同郷企業同士という組み合わせに親しみを感じられれば、好感を持って受け入れられるのかもしれない。

 あくまで、今回の協業は、一つの集客策であって量販店衣料品改革の第一歩でしかない。総合スーパーの衣料品部門が地元、そして多くの生活者からの支持を取り戻すには、これからの取り組みにかかっている。

著者プロフィール

磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)

磯部孝

1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。

2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。

2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)

2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。


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