愛媛県は、教育分野でもDXを進めている。その代表例が、4月から本格運用を開始した独自のCBT(パソコン上で出題、解答、採点、集計などを行うテスト方式)システム「えひめICT学習支援システム(EILS:エイリス)」だ。
教員端末で問題を作成する場合は、作りたいテストに応じて観点別・出題形式別・領域別などが簡単に設定可能。教員は紙テストと同じような感覚で問題を作ることができる。また、端末内のコンテンツバンクに掲載されている問題を自由にアレンジする機能も備わっているので、一から作問する必要がなく業務時間の短縮にもつながる。
作問と並び時間を取られる採点作業は、選択式・短答式問題は全て自動採点で、手間が省けるうえ採点ミスも減る。記述式問題ではAIが採点を補助するので、部分点は同一の基準で採点でき採点のブレがなくなるという。運用開始後の調査では、教員の約9割が「採点業務の負担が減った」(93.3%)、「採点がぶれなくなった」(97.8%)と回答した。
児童生徒の端末には、トップ画面にその日受けるテストや課題が一覧で表示されている。教員の設定した時間に合わせてテストや課題の一斉開始・一斉終了ができるため、事前に問題が流出するといった不正行為も減らすことができる。
その他、読書を記録する電子版読書通帳Webアプリ「みきゃん通帳」や、タイピング検定アプリも開発中だ。今後は、教員が作成したドリルやテストを投稿する機能の追加も予定しており、最終的には、EILSの「学習eポータル化」を目指しているという。
総務省からモデルケースとして紹介されるなど、一歩先を行くDXに取り組み続けている愛媛県。今後取り組もうとしているのが、行政や県内企業が持つさまざまなデータとDX施策を進める中で得られたデータを集約した基盤を作ることだという。
「行政・企業・DX事例が組み合わさったデータ基盤を作ることで、その活用を希望するデジタル関連企業が愛媛県に参入すること、そして新しいサービスが生まれ続けるような好循環を実現したい」(企画振興部デジタル戦略局デジタルシフト推進課)
少子高齢化が著しい地方にとって、県外から企業や人材をどう呼び込むかは大きな課題となっている。特産物や自然をアピールする自治体が多い中で、データ基盤というデジタル資源で企業や人材の取り込みを狙う愛媛県。地方自治体が抱える問題の新しい解決策のモデルケースとなれるか。
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