なぜそうなるか。結論から先に言ってしまうと、いつの時代も若者というのは3割くらいは新卒で入った会社を辞めるものだからだ。そういう若者の普遍的な価値観を理解しようとせず、時代やトレンドで「最近の若者は……」と推測しているに過ぎない。こんなことを30年間、われわれはずっと繰り返してきた。
分かりやすいのは、バブル期だ。今の50代以降のおじさんたちは、「われわれの世代は一度入った会社を勤め上げるのが当たり前」とか「今の若者は根気がない」とか偉そうに御託を並べるが、実はこれは真っ赤なうそだ。昭和から平成にかけた時代の大卒3年離職率は29.3〜27.6%で、実は直近10年ほどとほとんど同じだ。
厚生労働省が調べている「大卒就職後3年以内離職率」は30%を超えた1995年から2018年(31.2%)まで24年間は概ね30%前後から35%の間で推移していて、07年からの11年間にいたってはほぼ横ばいが続いている。
この30年、社会も労働環境も、若者の意識も大きく変わっている。しかし、若者の中で3割くらいはせっかくがんばって内定を取り付けた会社をサクっと辞めてしまうという傾向は何も変わっていない。
つまり、30年も続いている「ホワイトすぎる企業に不満を感じて退職する若者が増えています」という話を、2022年バージョンで解釈しただけの可能性が高いのだ。
確かに、ちゃんとした会社が調査を行ったわけだから、「もっと叱ってほしい」とか「ホワイトすぎる企業がゆるい」という理由で退職をする若者が多いというのは事実だろう。
ただ、これを額面通りに受け取るのは危険だ。いつの時代であっても、キャリアアップや成長を目指して転職や独立をする若者は存在している。彼らの退職理由を調査すれば、かなりの割合で「もっと成長したい」という類の話が浮かび上がるはずだ。そういう上昇志向の強い若者は、どうしても今の職場を否定する。「好きな仕事をやらせてくれない」「職場が思っていた雰囲気と違った」「上司とウマが合わない」などさまざまなマイナス面を並べるだろう。
それが今の時代のムードの中で、「もっと叱ってほしい」とか「ホワイトすぎる企業がゆるい」という回答になっただけではないのか。つまり、「表現」がやや異なるだけで、会社をすぐに辞める若者は、30年前も令和も実は同じ考えを持っているのではないか。
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