日銀が発表する企業物価指数と、総務省が公表する消費者物価指数を比較した。グラフを見ると、21年1月ごろから企業の輸入物価指数と企業物価指数がともに大きく上昇し始めても、消費者物価には目立った反応がしばらく見られない点が興味深い。
足元の円高基調によって、企業の輸入物価指数は落ち着きを取り戻しつつある。しかし、企業物価の水準は、消費者物価指数をはるかに上回る水準で横ばいの推移を続けている。この点を踏まえると、各企業の想定を上回る円安によるコスト増や値上げについては、諸経費のカットや経営効率化で吸収する「企業努力」で最小限に抑えられていた“たまもの”であったといっても差し支えないのではないか。
また、ニトリのように想定為替レートを130円から大きく下回る(円高となる)想定を置く企業も少なくないことから、予想値と実態が収斂(しゅうれん)していくにつれて、これまで値上げしていなかった企業が値上げに走ってくる可能性もある。
リアルタイムで急変動する為替に対して、企業の値付けにはタイムラグが存在する。ここ数カ月で一気に15%近く円高になっても、直ちに輸入製品が15%引きで販売されるわけではない。輸入品や、輸入品を原料とした製品価格は、現状の高騰した状態が今後もしばらく継続していくことになるだろう。
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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