JR東日本は他の鉄道会社と異なり、自前で国際ブランドが付いたクレジットカードを発行できる子会社・ビューカードを保有している。このビューカードのために、自前のATMを各駅に設置し、提携金融機関も拡大した。その中には楽天銀行もある。
ATMを設置していく中で、複数の銀行と提携関係を結び、カード事業も展開しながら金融ビジネスの基盤を作っていった。みずほ銀行や楽天ペイ利用者向けのSuicaもあり、JR東日本はSuicaやクレジットカード事業を軸にした決済も、鉄道事業に並ぶ重要な事業として成長させている。
巨大都市・東京を主たる経営基盤として、同社は鉄道だけではなく金融ビジネスも企業成長の重要な柱として位置付けている。その中で、同社はネット銀行として多くの利用者がいる楽天銀行をパートナーに、デジタル金融サービスを開始する。
JR東日本が銀行ビジネスに参入する場合、多くの駅にATMがあることが強みになる。メインバンク以外にも、銀行との提携関係を既に築いている体制がある。そうした状態を踏まえて、都市圏在住者、特に頻繁に鉄道を利用する層に向けてデジタル金融サービスを展開する戦略を打ち出した。
JR東日本が銀行ビジネスに参入できた背景に、特定の六大企業集団に入っていないことが挙げられる。もちろん、現在は六大企業集団の存在感は薄くなっているとはいえ、依然として企業は系列の枠組みの中で動きがちである。
2022年は鉄道開業150年を迎えた。JR東日本は、国鉄の分割民営化によりできた会社で、国鉄の課題をどう克服するか? という点を常に問われてきた。金融サービスのノウハウとシステムを育んできたこと、六大企業集団に頼らなかったこと。こうしたことがあって、意外となかった銀行ビジネスへの参入を可能にしたのではないか。
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