リテール大革命

ニトリ、オーケー、業務スーパー…… 「店を増やして成長」が難しい時代に勝ち残る企業の条件リテール市場の変化に迫る(2/3 ページ)

» 2022年12月27日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

値引きとインバウンド依存から脱却を

 企業によっては複数の領域に着手することもあることでしょう。しかし、ここで大切なのは、どの領域においても突出した価値や製品哲学を顧客視点で真に保持しているかということです。

 ナショナルブランド(NB)商品のパッケージを変えただけのPB品をつくり、PB品比率を上げるだけに終始すると必ず顧客が離反します。SDGsやESGという言葉を、業績向上や企業イメージのために表面的に打ち出すと、それは顧客に見透かされ逆効果となる時代です。

 製販一体型の業務スーパーや、製造小売り(SPA)型のファーストリテイリングのように、商品の自社企画、自社製造、自社流通という構造にて顧客ニーズ対応を強固にし、収益性も最大化させる。その根幹に顧客視点に立脚した製品哲学を据える。これがこれから勝つ企業には必須です。

 また、値引きとインバウンド依存からは脱却しなくてはなりません。残念ながら23年中にはインバウンド需要はコロナ前には戻りません。インバウンドが復調すれば、という淡い期待は持たず、国内消費をいかに着実につかむかに焦点を当てる必要があります。

 値引きについても同様です。各社の値上げが続くからといって、値引き・セールをして集客を図ることが主軸になっている企業は、今後さらなる苦戦が待ち構えることになります。伸長している企業は、値引きをしているのではなく、定価で顧客から支持を得る商品力があり、かつ高い粗利率を実現するサプライチェーンを構築しているという特徴があります。

 原価が高騰している中、セールに依存していては収益が悪化することは自然の理です。

23年の小売企業経営の重要ポイントは?(出所:ニトリ公式Webサイト)

23年はリテールメディア拡大元年になるか

 すでにいくつもの企業がリテールメディアに着手し、売場の広告サイネージやアプリ、ECサイトの広告枠を中心に広告の収益化を実現し始めています。リテールメディア構想を22年に終え、23年から本格的な拡大期に入る大手企業が増加することでしょう。それを後押しするのが、前述した店舗の飽和による新収益必要性の増大、Cookie規制によるオフライン(店舗)データ価値の向上です。

 そして、23年に注目すべきはバーチャル空間ではなく、リアル空間(店舗空間)にバーチャルコンテンツを付加するモデルです。クロスリアリティー(XR)としてすでに注目されてきましたが、今後は小売業の空間自体を価値に変え、その空間にバーチャルテナントが出店したり、店舗に来ないと見ることのできないデジタル体験を提供したりといったことが起きるでしょう。また、リアル空間上の新たな広告などが増加し、NFTやブロックチェーン技術とも連携して新しいリテールメディアが誕生することでしょう。

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