ライフステージによって「仕事」の解釈を変えることもできます。
例えば、リタイアの迫った人が、それまでは境界内にあった“有給の仕事”を外に排除し、代わって“無給の仕事(ボランティアなど)”を入れることで、「リタイアしたらどうしよう」というストレスの雨を回避し、「これからボランティア活動に最善を尽くそう」と生きるエネルギーを取り戻せるようになります。
ボランティアに精を出すことで、幸福感を持続させるのです。
件の調査の、ボランティア活動や保育・介護、町内活動などの、無償労働、社会活動、地域交流に参加する 「ヘルプ型」 の人ほど昇進意欲も高いという結果は、 まさに彼らが 「仕事」の解釈を変えたことを意味しています。それまでの「仕事=有給の仕事」を、 「仕事=有給・無給の仕事」に変えた。 「会社だけが人生じゃない」と思考を変えたことを示唆する結果です。
会社=COMPANY(カンパニー)とは、 「ともに(COM)パン(PAINS)を食べる仲間(Y)」です。 「個」ではなく「チーム」です。 「お互いさま意識=ヘルプ型」のある人は、会社というコミュニティの一員であり続けようとした人たちです。
そこに「会社だけが人生じゃない」という思考が掛け合わされたことで、昇進意欲=能力発揮の機会を手放さずにすんだ。一見矛盾しているように見えるかもしれませんが、キャリアが広がったのです。
彼らは決して「会社員」をあきらめてはいません。
年齢を重ねて50歳にもなり、役職が高くなると、「人に頼るなんて弱い奴がやることだ」などと思いがちです。しかし、傘を借りる勇気があれば、世界が変わります。それまで「時間がない」 「忙しい」 を言い訳にしてきた、 会社の外の社会活動に具体的にかかわると、「私」が変わります。
「ずるずる会社に残る自分」を卑下せず、会社員をあきらめなければいいのです。
一つだけ条件があるとすれば、四番バッターを目指すのをやめて、守備に回ること。打球がどんな方向に飛ぼうとも、確実にキャッチする技を磨いてください。
「しがみついてる」 と思っていると、 本当にダメになる。 会社員をあきらめない!
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)がある。
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