また、値上げを可能にしている要因の1つに継続的に施設への投資を進めているということがあります。なお、
業績が苦しかった22年3月期でも1002億円の投資を実施している他、23年3月期も1185億円の投資を実施する予定です。なお、24年春には新エリアをオープン予定です。
こうしたこともあり、コロナ禍以前の20年3月期の建物・建設仮勘定(建設途中の投資の金額)の合計は4430億円ほどでしたが、それが直近では5570億円まで増加しています。テーマパークとしての価値を高める取り組みができていたことで、客単価の上昇へも好影響があったと考えられます。
顧客が増加したとなると、食事の時間が制限され、1人当たりの飲食販売収入が減少することもありえます。しかし、アルコールの販売を再開したことで結果は66円増の3197円でした。アルコールは単価も高い上、利益率も高いため、原料費高騰で飲食の利益が圧迫される中で利益への好影響も大きいでしょう。
実際に前期からの利益の変動要因を見てみると、原料の高騰が進む中でも商品・飲食の原価率は減少。オリエンタルランドはその影響として、30億円ほどのプラスの影響があったと発表しています。テーマパークにとっても、アルコールを販売できることは重要なのです。
また、1人当たりの売上高の増加は期初予想を上回っていたとしていて、値上げをしたチケット収入だけでなく、商品販売、飲食販売の収入も想定を上回っています。
これまでのディズニーランドのような人気のテーマパークは、繁忙期には数時間待ちが当たり前で、需要が過剰な状態でした。ある程度人数が制限されている現状の方が十分に遊ぶことができ、以前より1人当たりの消費額が増えているのでしょう。となると顧客満足度的向上につながっている可能性もありそうです。
マーケットが縮小していく日本において、体験価値を上げて価格上昇させていく必要性はオリエンタルランドは以前から感じていたと推測されます。
コロナ禍は業績には悪影響をもたらしましたが、価格の変動や客数が減少した際の満足度など、データを取るという点に関してはプラスに働いていると考えられます。これまでは得られなかったデータも取れているはずです。今後もさらに値段の調整を進めていくのではないでしょうか。
続いて、コロナ禍前と比べてどんな変化があったのか、業績を見ていきましょう。
コロナの影響がなかった20年3月期の第2四半期と比べ、22年3月期の第2四半期の売上高は17.9%減、営業利益は37.7%減で、コロナ禍前の水準には回復していません。しかし、その内容には大きな変化があります。
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