「シン・鉄道」のカギを握る会社はどこか 技術がどんどん“加速”する杉山淳一の週刊鉄道経済(2/6 ページ)

» 2023年01月02日 10時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

2023年は地方と都市で明暗

 23年も明るい話題と寂しい話題が盛りだくさんだ。

 明るい話題では「相鉄新横浜線・東急新横浜線」の開業だ。3月18日に東急東横線・目黒線の日吉駅と相鉄新横浜線の羽沢横浜国大駅がつながる。途中にある新横浜駅で、東海道新幹線と横浜市営地下鉄ブルーラインに乗り換え可能だ。今のところJR東海と横浜市からキャンペーンなどの発表がないけれど、盛り上がりに期待だ。

 3月27日に福岡市営地下鉄七隈線が延伸開業する。郊外への延伸ではなく、都心方向だ。天神南駅から博多駅まで。七隈線は鉄道空白地帯だった福岡市西南地域に建設され、ベッドタウンとして期待された。しかし利用が低迷していた。その起死回生策が博多駅の延伸だ。業績低迷部門に攻めの施策。効果に期待したい。

 7月は南阿蘇鉄道が全線開業となる。16年の熊本地震で全線不通となり、3カ月後に一部区間が再開していたけれど、JR豊肥本線と接続できなかった。運行再開の話し合いの中で、JR豊肥本線に直通し肥後大津駅まで乗り入れる構想が浮上した。熊本県が費用支援を実施しており、JR九州も協力の意向だ。肥後大津駅は熊本県が熊本空港アクセス路線として肥後大津駅を起点として検討しており、熊本駅へ直通予定となっている。これは南阿蘇鉄道にとっても朗報だ。観光誘客に期待できる。

 8月には宇都宮ライトレールが運行開始。車両の愛称はライト(雷都)ライン。路面電車の新規開業は75年ぶり。LRT車両や路面電車に注目が集まって以降、ついに新規路線の開業となった。今後は宇都宮駅西側の区間整備に着手する。

宇都宮ライトレールがいよいよ開業する

 残念ながら寂しい話題もある。3月末の運行を最後にJR北海道留萠本線の石狩沼田〜留萌間が廃止される。年内には根室本線の富良野〜新得間も廃止予定だ。留萠本線は朝ドラ『すずらん』のロケ地となった恵比島駅(明日萌駅)があり、根室本線廃止区間にはドラマ『北の国から』に登場した布部駅、映画『鉄道員(ぽっぽや)』のロケ地となった幾寅駅(幌舞駅)がある。これらの施設の今後も気になる。

 コンテンツ関連の鉄道や列車は、コンテンツの賞味期限が終わるとロケ地訪問客が減る。継続的に集客を維持する手立てが必要だ。

 災害不通から復旧せずに廃線という流れも定番化した。22年8月の大雨で被災したJR津軽線の蟹田〜三厩間も、今後のあり方についてJR東日本と地元自治体の協議が始まる。

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