劇場内のスマホ操作を注意→「何が悪いのか分からない」 福岡・博多座が検証動画をつくった背景鑑賞価値を守るため(2/3 ページ)

» 2023年01月12日 14時25分 公開
[ITmedia]

前のめりはどれぐらい視界をふさぐ?

 博多座では2022年4月にも「前のめりは後ろの席の視界をどれくらいふさぐ?」と題した検証シリーズ動画を作成している。

 座席の背もたれに背中をつけていれば、後ろの席からも視界は良好だが、前のめりの状態で着席すると、後方席からは舞台上の出演者が頭に隠れて見えなくなる。

「前のめりは後ろの席の視界をどれくらいふさぐ?」と題した動画も作成している

 この動画には「前のめりでこれほど視界が遮られるとは初めて知った」「自覚なく前のめりになっているかもしれないので、気を付けたい」と、分かりやすい内容に共感する声が多数寄せられた。

 担当者によると、当時、人気の公演舞台『千と千尋の神隠し』を控え、これまで劇場にあまり来たことがない人や、子どもたちも多く来場するため、観劇マナーを改めて周知しようと考えて作成したという。

背もたれに背中をつけた場合は後方からの視界も良好

 動画では、背もたれに背中をつけての観劇を呼び掛け、最後には「『心の前のめり』は大歓迎。」と洒落を利かせたフレーズで締めくくっている。

「鑑賞価値」の向上を目指す映画・劇場

 検証シリーズ動画はどの程度の時間をかけて作成しているのか。担当者によると、公演がない合間を見て、スタッフらがカメラを手にして30分ほど使って撮影し、3日ほどかけて編集しているという。

 スタッフらが自ら撮影し、検証動画を作成する取り組みは、映画業界でも見られる。イオンシネマを運営するイオンエンターテイメントは22年9月に、暗い映画館内でスマートデバイスの光がもたらす影響を実証検証し、結果を写真とともにTwitterに投稿。大きな反響が集まったため、同社は鑑賞マナー動画も作成し、同年10月から映画本編前に上映する取り組みを始めた。

前のめりで着席すると後方席からは舞台上の出演者が頭に隠れて見えない

 演劇や映画業界がこうした取り組みを進める背景には、劇場での「鑑賞価値」を最大化したいとの考えがある。

「『心の前のめり』は大歓迎。」

 コロナ禍で営業を休止するなどし、演劇や映画館市場は大きな打撃を受けた。帝国データバンクの調査では、21年度の国内映画館市場(事業者売上高ベース)は2100億円となり、過去10年で最少だった20年度(1783億円)と比べると回復基調にあるが、コロナ前の19年度(3271億円)の6割ほどの水準にとどまっている。

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