ただ、これが「妄想」に過ぎなかったことは、個人経営の飲食店などに大量にバラ撒(ま)かれた「コロナ補助金」の結果が雄弁に語っている。
コロナ禍で、飲食店の多くは休業や時短営業へと追い込まれ、経営が急速に悪化した。そうなると、それらの店で時給で働いている人々は、収入を絶たれるわけなので命の危険もあるということで、店を閉めている間にも、従業員が生きれるように「休業補償」を払うようにと政府は大規模のバラマキを行った。
しかし、残念ながらその金が労働者に届くことはなかった。
20年10月、野村総合研究所が、コロナで休業を経験した労働者がどれほど休業手当を受け取っていたのかを調べた。正社員は62.8%、契約・派遣社員は49.6%と5割から6割はどうにか休業手当が受け取れているのに対して、パートやアルバイトで働く女性ではわずか30.9%にとどまっている。
これは、中小企業の中には、政府から補助金をもらったところで、現場の労働者に還元しない事業者もかなり存在している――という実態を浮かび上がらせている。
それどころか「時短なんで今月はシフト減らしてくれる」「ごめん、今厳しいから辞めてもらっていいかな」なんて言って、協力金などをもらいつつも、パートやアルバイトを「雇用の調整弁」にしているようなところもあるのだ。
こういうシビアな現実がある中で、例えば、中小企業に「賃上げ協力金」のようなものをバラまいて効果が望めるだろうか。
その多くは間違いなく「運転資金」に使われる。中小企業経営者からすれば「この厳しい時代に雇ってあげているだけでもありがたく思え」という考えがあるので、会社の経営を安定させることに使われる。これからもっと日本経済が悪化したときに備えて、大企業でいうところの「内部留保」にされてしまうのだ。
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