今でこそ一定の成果をあげている本事業だが、最初から筋書き通りに進んだわけではない。スマホ普及事業においては、入り口として村の拠点となる数カ所で「スマホ普及事業の説明会」を開催したが、ほとんど誰も来なかった。
「スマホが必要ない、よく分からないと思っている人に対して、こちら側の都合で決めた日時・場所に説明を聞きに来てくださいと言っても、『自分には必要ない』と思いますよね。住民の課題感を理解できていませんでした」(安岡氏)
そこで、全82の自治会に電話や手紙で連絡を取り、「説明会を開催したいので都合のいい日時を教えてください」と依頼し、職員が各自治体に出向いた。コロナ禍のため約50の自治会での実施にとどまったが、6カ月に1回ほど説明会を繰り返し、参加者が増えた。そこでは、こんな話をしたそうだ。
「人口減少に伴い、社会保障費制度の維持が困難になっている。デジタル化しなければ、行政サービスが受けられなくなる。だから、みなさんにスマホを持っていただき、自身で必要な情報を取得してもらえたら、このぐらいの予算が削減できる。いざというときに、すぐに必要な情報にリーチもできる。
また、最長でも26年3月には3Gサービスが終了し、多くのガラケーが使えなくなる。われわれはスマホの所持を強制しているのではなく、ガラケーがなくなるのだから今から練習したほうがいいだろうと。みなさんの選択肢として、この事業を進めていると訴えました」(安岡氏)
同時に、スマホ購入や切り替えの手続きができるようKDDIのショップを出張所として村内に設けた。その取り組みが継続して、現在は出張販売も兼ねた「よろず相談所」として運営されている。
このほか、村唯一のスーパーマーケットにも代理店を置いて販売キャンペーンを展開するなど、住民の生活圏内に出向くようにした。こういった施策が、スマホの普及につながったようだ。
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