日高村のスマホの普及率は約80%に上がったと紹介したが、分母には0〜9歳までの子どもやスマホを持つのが難しい要介護者や障がい者も含まれる。そういった住民を除外すると、実質の普及率は約86%となる。いまだスマホを持たない住民は、約500人だ。
「この500人の方たちは、必要ない、使い方が分からない、価格が高いという3つとは別の課題も抱えているはず。例えば、感情論的なもので行政を信用できない、デジタルの安全性を疑っているとか。イノベーター理論でいうラガード(遅滞者)で、とにかく保守的。
特別なことをするというより、現在の取り組みを継続していくことが重要かなあと。そのうえでポイントを付与するなど、プラスワンの取り組みを都度やっていく必要があるでしょう。何がササるかは分からないので、トライアンドエラーを高速で進めていきます」(安岡氏)
普及率100%は達成できていないが、住民への情報伝達が容易になり、役場のDXを進めやすくなったと感じているそうだ。
「他の自治体から、『どうしたら専用アプリの利用者が伸びますか?』といった質問を多くいただきますが、多くは住民のニーズを把握せず、サービスを利用できる環境をつくれていないのが原因。行政側が一方的に導入したサービスは理解されないし、共感もされない。だから使われない。DXといっても、泥臭いアナログな作業を1年半にわたり繰り返して、ここまできました。遠回りが一番の近道ですよ」(安岡氏)
国連経済社会局(UNDESA)が発表した「世界デジタル政府ランキング2022」で1位となったデンマークでは、1968年に日本のマイナンバーにあたる個人番号(CPR番号)が導入され、2001年にデジタル戦略が打ち出された。今日では、多くの行政手続きがオンラインで完結する。
”市民のためのICT・IoT活用”、”人間中心”を方針として、段階的にデジタル化を進展させたが、ITを使わなければ公共サービスが使えないという強制力も普及に貢献したという。身体的・精神的な理由がある場合は、公共機関とのデジタルコミュニケーションの免除申請ができる。
こうした民主主義国家のDXを参考にするならば、最終的には「特例を除きデジタル化を押し切る」必要性もあるのかもしれない。
写真提供:日高村観光協会
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