百貨店はこのまま消えてしまうのか 「いや、復活できる」これだけの理由スピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2023年01月31日 10時30分 公開
[窪田順生ITmedia]

「幅広い層」にこだわるのであれば

 日本の人口が右肩あがりで増えていく時代は、経済も順調に成長していくので、幅広い層をターゲットにするビジネスモデルが成立した。しかし、人口が減って、しかも賃金が上がらないとなると、ガラガラと崩壊していく。

 庶民は「安さ」を追い求めるので、激安スーパーやファストファッション、郊外のイオンモール的な庶民派のショッピングモールができれば続々とそちらへ流れてしまう。百貨店に足を運ぶ機会があってもそこで買い物はほとんどしない。

 ウィンドウショッピング的に商品を手にとってみて、ネットで検索して安いサイトで購入をする。百貨店で買い物をするのは年に何度かあるセールくらいになっている。

 つまり、人口増時代にできあがった、幅広い層を取り込む「百貨店」というビジネスモデルは、人口が減少に転じたことで通用しなくなったのだ。ただ、もしそんな中でもどうしても幅広い層にこだわりたいのなら、手がないわけでもない。百貨店単体にはもはやその力はないので、幅広い層を集められる施設とコラボするのだ。

 具体的には、野球場や競馬場、温泉施設などを百貨店に併設をする。先ほど申し上げた高級ホテルや高級レジデンスを併設して富裕層を誘い込むのと同じように、エンタメ施設で幅広い層を百貨店に誘い込むのである。

 実際、すでにそのようなコンセプトのものは生まれつつある。例えば、日本ハムの本拠地として建設中の「エスコンフィールド北海道」には「ザ・ロッジ」という商業施設もつくる予定だ。

エスコンフィールド北海道に商業施設「ザ・ロッジ」ができる(出典:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)

 野球ファンも高齢化は進んでいるが、家族づれや若者などまだまだ幅広い層がいる。野球場へやって来た流れで、併設する百貨店に寄って、食事や買い物を楽しむというパターンは考えられる。

 実際、米国の「ボールパーク」の中には、スタジアムにレストランやバーなどが入った複合エンタメ施設が併設されている。これが成立するのなら「日本流ボールパーク」は百貨店とコラボしたっていい。球団が優勝したらそのまま記念セールもできるなどシナジー効果も高いはずだ。

 また、温泉施設なども考えられる。和歌山にはかつて「丸正百貨店」という老舗百貨店があったが倒産してしまって、その跡地には現在、「フォルテワジマ」という商業施設ができている。そこの地下には「ふくろうの湯」という温泉施設が併設されているのだ。

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