百貨店はこのまま消えてしまうのか 「いや、復活できる」これだけの理由スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2023年01月31日 10時30分 公開
[窪田順生ITmedia]

百貨店が生き残っていく道

 そういう施設をつくったL Catterton Real Estateが東急百貨店跡地に高級ホテル・レジデンス付きの商業施設をつくるとなれば、どういうものができるのかは大体想像がつくだろう。ただ、露骨に金持ちだけにするとカドがたつので、商業施設の中には申し訳程度に、ユニクロなどの庶民的なブランドも入るかもしれない。フードコートやデパ地下的なおしゃれな惣菜コーナーもできるかもしれない。

 ただ、それらは“おまけ”に過ぎない。収益の柱はあくまで富裕層が落とすお金なので、庶民から反感を抱かせない程度に体裁を整えただけのものなのだ。

 このような話をすると、「富裕層に限定するのは何かあったときにリスクが高い」「幅広い層が利用できない百貨店など意味がないのでは?」なんて感じる人も多いだろう。だが、日本の百貨店がここまで衰退してしまった本質的な原因は、「すべての客を平等に扱う」ことに固執してしまったからだ。

 ご存じの方も多いだろうが、日本の百貨店はもともと都市開発の一環で発展した。鉄道を敷いてターミナル駅の周辺に繁華街と百貨店をつくって、その沿線に住宅街をつくっていく――。そんなビジネスモデルを阪急阪神東宝グループ創始者の小林一三が始めて、その手法を参考にして関東で進めたのが、東急グループ創業者の五島慶太だ。

 都市開発なので当然、あらゆる消費者を意識した。金持ちから庶民まで、高齢者から赤ん坊まで、まさしく「ゆりかごから墓場まで」をカバーする都市開発ビジネスの拠点が、百貨店だったのである。

 だから、百貨店は長く「幅広い層」の憩いの場であった。屋上には遊園地ができて家族連れが楽しめた。裕福な人は高級ブランドで優雅な買い物を楽しみ、庶民も背伸びしてお値打ち品を購入できた。レストラフロアも高級店からファミリーが外食できる程度の値段設定まで幅広くした。そして、地下の食料品売り場は、貧富の差に関係なく幅広い層が手頃な価格で、おいしい惣菜が食べられるようにした。

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