空き家問題、放置してはいけない無策の象徴(2/4 ページ)

» 2023年02月03日 07時00分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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 もちろん対策は簡単ではない。空き家を減らすための地域での取り組みが各地で試みられているが、容易には進んでいないのが実情だ。(1)そもそも空き家の利用者が、特に地方では少子高齢化でどんどん減ってしまっていることが最大の障害である。

 しかしそれを除いても大きな典型的障害があと2つある。(2)空き家を取り壊してしまうと固定資産税の優遇措置が解除されてしまう(ため相続者が空き家を取り壊して更地にするインセンティブがない)ことが一つ。(3)土地の処置・再利用に関し所有者もしくは共同名義人の全てから賛同をなかなか得られない(典型的には所有者が認知症になった、または身寄りのはっきりしないまま所有者本人が死亡、もしくは共同名義人となっている兄弟・親族の一部が反対か行方不明、など)ことがもう一つだ。

 ではこうした状況に歯止めを掛ける措置は執られているのだろうか。従来はほとんどNOだった。でもさすがに近年、何とかしなきゃという切迫感の下、国レベルでも限定的かつ小出しだが対策が出始めている。

 2015年には空き家対策特別措置法が施行され、危険な状態にある空き家は、自治体が略式代執行できるようになった。相続放棄された物件については自治体が「相続財産管理人」などの仕組みを使って売却することもできるようになってきた。

 でも実際にそうした措置が執られるのは都市部のごく一部に過ぎない。地方の資産価値のない物件は税金で措置しても大した額で売れないので「足が出てしまう」からだ。現実には首都圏でさえ対策は遅れ気味だ。実は、空き家が全国最多なのは地価が高いはずの東京都世田谷区で、何と5万戸もあるそうだ。

 並行して、先の障害(3)の問題を減らすべく、2024年4月からは「相続不動産の登記」の義務化が施行される。法改正以前に所有している相続登記・住所などの変更登記が済んでいない不動産についても義務化される。

 誰が相続したのかを誰でも把握できるようになることで、危険な状態にある空き家を何とかせよと所有者に働き掛けたい自治体はもとより、その空き家または土地を活用できると考える個人・法人等が所有者にコンタクトできる可能性は高まるだろう。

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