空き家問題、放置してはいけない無策の象徴(3/4 ページ)

» 2023年02月03日 07時00分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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 しかし相続不動産に限ることがボトルネックになろう。親族のはっきりしない高齢者が認知症になって高齢者施設に入ってしまえば、その所有空き家の正当な相続人はつかめないまま、誰も住まない空き家は放置されてしまう。こうした格好で放置される空き家はまだまだ増加すると見込まれているのだ。

 国も遅ればせながら追加の検討を始めてはいる。まずは先の障害(2)(固定資産税の優遇措置解除によるディスインセンティブ)を主要因として放置空き家が発生する状況を減らすべく、管理状態が悪い空き家の修繕・建て替えを促すため、固定資産税優遇措置の見直しを検討し始めたそうだ。

 現在、住宅用地は固定資産税の特例措置として、課税標準が200平米以下の場合は6分の1、それを超えると3分の1に軽減される。それに対し倒壊する危険や衛生面で有害となる恐れのある「特定空き家」については空き家対策特別措置法で対象外とする規定を設けている。

 政府は今回、「特定空き家」の予備軍である「管理不全の空き家」も優遇対象から外す見込みだ。対象としては全国で約23万5千戸あると言われている。実質的な増税をすることで、早い段階で手入れすることを所有者に促し、危険な「特定空き家」にまで悪化することを予防したいということだ。この方向は間違っていない。むしろ遅すぎるくらいだ。

 そしてもう一歩、踏み込むべきだ。「管理されない空き家」が増える原因の一つを失くすためにも、先に触れた「相続不動産の登記」の義務化に加え、国民個人および法人全てに対し、今所有している不動産の登記の全面義務化を早急に実施すべきだ。

 そしてさらに踏み込むべきは、住宅用地での固定資産税の特例措置自体を縮小すべきだと考える。

 今、日本は財政危機のさなかにありながら、防衛費を倍増し、子育て支援を格段に拡充しようとしている(後者には大いに賛成したい)。その財源として消費税や所得税の増税などが取り沙汰されているが、それは経済へのダメージが大き過ぎるため、非常に筋の悪い打ち手だ。

 むしろこの際、現存する非合理的な税金のアンバランスを思い切って是正すべきで、その一つとして固定資産税を大幅に増額すべきと提案したい。具体的には、公示地価の70%程度と安く設定されている固定資産税評価額を公示地価に近付けること(併せて相続税の路線価も同様だ)、そして固定資産税の特例である住宅用地に対する軽減措置を思い切って半減程度にまで縮小すべきだ。

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