空き家問題、放置してはいけない無策の象徴(1/4 ページ)

» 2023年02月03日 07時00分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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沖博道氏のプロフィール:

 パスファインダーズ社長。30年にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、新規事業・新市場進出を中心とした戦略策定と、「空回りしない」業務改革を支援。日本ユニシス、アーサー・D・リトル等出身。一橋大学経済学部、テキサス大学オースティン校経営大学院卒。


 総務省の2018年版『住宅・土地統計調査』によれば、全国で空き家は849万戸にまで増えており、住宅の総数に占める割合は13.6%にまでなっている。

 野村総研の予測では、空き家の除去や住宅用途以外への有効活用が進まない場合、2033年には、総住宅数約7100万戸に対し空き家数は約2150万戸、空き家率は何と30.2%に上昇するとされている。

 この空き家率の急増見込みには根拠がある。それは2025年以降、持家率の高い団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に突入するからだ。いわゆる「2025年問題」の一つなのだ。

 彼らの持ち家は地方や郊外の多少不便なところにあるケースも多く、そうなると子や孫が引き継いで住んでくれないのだ。しかも家屋自体の(断熱・気密・耐震などの)性能も低い上にメンテナンスも悪く、貸家にしても借り手がつきにくいケースが多い。

 その結果、上記資料での「総住戸数、空き家数および空き家率の実績と予測結果」のグラフを見たら分かる通り、増加ペースのカーブが2018年以降は急に傾斜がきつくなる、つまり急激に悪化することが予測されているのだ。

 これはかなり深刻な状況で、近隣の生活環境が明らかに悪くなる。近所に崩壊した空き家が増えてくれば駅前シャッター通りと同じく、雰囲気も悪くなる。でもそれ以上に実害が出てくる。

 物理的に建物が腐ったり、ごみが投げ捨てられたり、中で動物の死骸が腐ったりして、悪臭が漂う。そしていたずらで建物がさらに壊されたり放火されたり、中で犯罪が行われたりする可能性すらある。その結果、周辺地価には引き下げ圧力が掛かる。近隣住民としては迷惑この上ない。空き家を放置することは明らかに公共のデメリットなのだ。

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