覚えている方も多いだろうが、マクドナルドの全国の店舗で相次いで、チキンナゲットなどの商品に、ビニール片や人の歯などの異物混入が発覚した騒動である。といっても、正確に言えばこれは「続発」したわけではなく、ワイドショーやらがあまりに大騒ぎをするので、全国のマック利用者が「そういえば私もあったなあ」という感じで次々と情報提供をしたのだ。これまでは店員にクレームを入れて、謝罪を受けて終わっていた事案が、マスコミ報道で掘り起こされたというわけだ。
こういうブームになると数字が稼げるので、マスコミはさらにハッスルする。マクドナルド本社に「なぜ会見を開かないのだ」と詰め寄って、発覚2日後に役員による「謝罪会見」を開かせたが、そこでは「やれ態度が悪い」「なぜ社長は出てこないのか」とボコボコに叩いて、マックの株価もガクンと落ち込んだのはご存じの通りだ。
ワイドショーではコメンテーターたちが渋い顔をして、「もうマックは利用できない」「こういう問題を解決しない限り食の信頼回復はできない」なんてプリプリ怒っていたが、実は消費者への「実害」はごく小さなものだった。福島県郡山市の店舗でアイスクリームを食べたお客さんが、混入したプラスチック片で口の中を切ったくらいで、腹を壊したとか、嘔吐したという、命に関わるような健康被害はなかったのである。
そこで気になるのは、なぜはるか以前から日常茶飯事で令和の時代もSNSでスルーされている異物混入が、8年前の日本では、マスコミが連日連夜お祭り騒ぎをする「極悪非道な不祥事」にレベルアップしてしまったのかということだ。
これにはいろいろな意見があるだろうが、筆者は当時のマスコミが報道で積み上げてきた「トレンド」が影響していると思っている。この問題が発覚する前、マックに対してはこんなトレンドがあった。
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