「外食テロで店がガラガラ」問題 スシローが訴えても“解決”できないワケスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2023年02月07日 11時09分 公開
[窪田順生ITmedia]
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マスコミの無責任報道にメスを

 こういうネガティブなトレンドが風船のように膨らんでいた。そこで異物混入という問題が起きて、風船がはじけるように「大事件」となった。コロナの不安を煽れば煽るほど視聴率が上がったように、事件も大騒ぎをすればするほど、マスコミはチャリンチャリンとお金が入るシステムだ。だから事件がブームへ格上げされていくのだ。

 それを踏まえると、今回の外食テロにも前兆はあった。騒動の発端となったスシローは、22年から「おとり広告」問題などで不祥事が続いていて、ネットやSNSではスシローのニュースというだけでバズるという土壌もあった。

 そこに加えて、22年末、韓国人観光客が福岡の寿司屋で、ワサビを異様に盛り付けられた「ワサビテロ」の被害にあったとSNSで報告した。かの国ではテレビでも取り上げられるような大ニュースになって、日本のマスコミも大きく取り上げた。SNSでは「いつもの自作自演だ」「あの盛り付け方を見たが、いたずらとしか思えない」など議論が盛り上がっていた。

 つまり、スシローというパワーワードに「寿司にいたずら」というトレンドがかけ合わさったことで、今回の迷惑動画がかなり拡散されたという見方もできるのだ。こういう「強いネタ」なので、マスコミも飛びついて、堅苦しいニュースそっちのけでお祭り騒ぎをしたというワケだ。

 今回の問題で、非常識な行為をした「犯人」が悪いのは言うまでもない。個人的には、今後の抑止力のためにも、高額賠償請求も致し方がないと思う。ただ、異物混入と同じで、ブームが過ぎ去ってしまえば、同じような非常識なことをしても、店側に「ごめんなさい」と謝罪してチャンチャンとなるだろう。つまり、今回スシローで迷惑動画を投稿した若者は多額の賠償金を請求されて、3年後にまるっきり同じことをしても訴えられないなんてこともあるのだ。

 両者の違いは、マスコミが騒ぐか騒がないかしかない。ニュースとして消費できる迷惑動画は「一生償え」で、そうではない場合は「若者のいたずら」扱いというのはかなり理不尽だ。こうした問題を解決するためにも、犯人の厳罰化とともに、マスコミの無責任報道にもメスを入れるべきではないか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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