お肉屋さんや焼肉店などで、牛肉の部位を記した絵を目にすることがある。首にある肉は「ネック」、あばら骨の周辺は「バラ」、背中の中央部は「サーロイン」といったことが書かれている。肩の部分を見て「やっぱり肩ロースがいいんだよねえ。やわらかくて適度に脂がのってるし」などと思われたかもしれないが、今回のコラムは「牛」の話ではなく、「エレキギター」である。
下の図を見ていただきたい。エレキギターのボディとネックの部分に、カタカナで「スプルース」「パドック」「グラナディラ」などと、見慣れない文字が並んでいる。これは全て木材の名称である。
通常のエレキギターのボディには、アルダーやフレイムメイプルなど1〜2種類の木材を使うことが多いが、画像を見ると、8種類ほど使われているのだ。向かって右から見ると「パドック」「ホンジュラスローズウッド」「マホガニー」などと違った木を使っていて、じっくり見ると「牛肉の部位」に見えてくるほど。
このような画像を紹介すると「どこかの楽器メーカーがウケを狙ってつくったんでしょ」と突っ込みが入りそうだが、違う。ヤマハが真面目に、そして未来のことを考えて、“試作品”としてつくったのだ。
それにしてもなぜ「牛肉の部位」でもなく、「木製のパズル」でもなく、たくさんの小さな木を集めてエレキギターをつくったのだろうか。大前提の話になるが、楽器には長い歴史がある。当然、エレキギターにも歴史があって「いい音を出すには、この木材が適しているよね」といった具合に、ほぼほぼ完成形として技術が確立されている。
これまでになかったモノを生み出すことが難しい世界であるが、だからといって“あぐら”をかいているわけにもいかない。新しい価値を提供していかなければいけないし、これまでになかった技術を研究しなければいけないし、環境が変わればそれにも対応していかなければいけない。このようなことを考えている中で、ヤマハはあるキーワードに直面した。「木材の調達」である。
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