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日本のスタートアップは、なぜ世界で活躍できないのかIGPI冨山和彦氏×テラドローン徳重徹氏【前編】(2/3 ページ)

» 2023年02月13日 07時00分 公開

スタートアップはIPOがゴールじゃない

冨山: 日本のベンチャーが不毛なのは、ローカルな市場環境にハンディキャップがあると感じていることだと思います。

 北欧のベンチャーなんて、自国のことなんて全く気にしていないのでハナから考え方が違います。だから日本にはそこそこの時価総額だったり、IPOしてから徐々に落ちていったりという会社が生まれるわけなんですよ。

冨山和彦氏(IGPI)

徳重: 僕も30歳の頃からスタートアップの世界にいて、環境はよくなってお金も集まりやすくなっていると感じますが、IPOがゴールみたいな人が多くて。それだと社会的なインパクトが全くないですよね。

 スタートアップの裾野を大きくすることは大事なんですけど、かつての野球の野茂選手やサッカーの中田選手のように「突き抜けたらできるじゃん!」と感じる分かりやすい事例も非常に重要だと感じています。

冨山: 日本のベンチャーエコシステムに欠けているのは山の頂上に居る存在かもしれません。既存の大企業ではイノベーションが起きづらいため……良くも悪くもスタートアップが日本のグローバルでトップを取る会社になる必要があります。ただ、残念ながら野茂選手や中田選手みたいな存在が日本のスタートアップには出てきていませんね。

徳重: 突き抜けて世界で勝つことが大事ですよね。

「作っておしまい」ではなく、ビジネスに参入せよ

冨山: 日本のハードインフラ系の企業は海外で展開するにしてもODAのお金で作って売り切り、というような形になってしまうんですよ。

 世界の主流はストック型のオペレーションを受託して回す方向に変わっているし、リカレント型、サブスク型で収益を上げないと評価されなくなってきています。作っておしまいではなく、O&Mのビジネスに入る流れに乗れていないのが日本のインフラ関連企業の共通課題ですね。

徳重: 冨山さんは大企業の経営者の方にも提言していますが、皆さん分かっていると思うんですよね。

冨山: 大企業の経営者もアタマでは分かっているんです。ただ、インフラを作る話とオペレーションを回す話は、どんなにクルマを上手に作れる人たちでもバス会社は経営できないように自動車メーカーと交通機関くらいにビジネスモデルが違うんですよね。

 これは日本のエレクトロニクスがGAFAが出てきた時に対抗できなかったイノベーションのジレンマみたいなものがあります。

徳重: 僕も大企業の方を前に講演することがありますが、その際に新事業と大企業のオペレーションは相撲と水泳くらい違うと例えるんです。

 相撲では負けるけど水泳だったら早いことは山ほどあります。大企業の世界観で行くと、偉い人が相撲タイプなのでイメージが湧かないですよね。

 水泳をするにしても、相撲力士の水泳大会ではなくオリンピックの水泳競技だから戦う意図を分かった人と勝負しなければならないんです。日本企業が「技術で勝ってビジネスで負ける」というのもウソで、技術で勝っていても種目が違うから勝てないんです。

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