つまり裏を返せば、副業を認めない会社は“生涯一社主義”の価値観にもとづき、社員を専有財産として独占し続けたい意思を持っているということです。ただしそれは、暗に以下を宣言していることにもなります。
(1)終身雇用をこれからも維持していく
(2)自社だけで社員に充分な給与を支払う
(3)副業人材からの支援には頼らない
社員は会社から専有財産と見なされている限り、自身が有している人材としての価値や可能性をその会社にすべて預けざるを得ません。必然的に、他社でも通用する技能を磨いたり確認したりする機会を得られないまま年齢を重ねていくことになります。それなのに、もし会社が終身雇用しないとしたら、社員はそれらの機会や可能性を放棄するリスクだけを負うことになってしまいます。
また、会社の専有財産として副業が認められないと、社員としては本業の給与だけに頼らざるを得ません。それなのにもし会社が充分な給与を支払えないとしたら、社員やその家族たちは厳しい生活を強いられることになります。
そして、会社が社員を専有財産とみなして副業を認めないのであれば、他社で働く副業人材に自社の業務遂行を依頼するのは筋が通らない話です。自社の社員には認めていない権利を他社には認めさせ、副業人材を受け入れるというスタンスはフェアとは言えません。
一方で、会社が社員を社会の共有財産だと見なして副業を認めるようになった場合、副業する社員側には相応の節度が求められます。こちらも3点挙げたいと思います。
(1)本業を蔑ろにしないこと
(2)フルタイムの掛け持ちなど不誠実な対応をしないこと
(3)業務過多に陥らないこと
副業している間は、会社は社員の行動をコントロールできません。それは社員からすると自由を手にした一方で、自身の活動をコントロールする責任が生じるということです。当然のことながら、副業に熱心になるあまり、本業を蔑ろにするようなスタンスは認められません。
また、海外ではテレワーク環境を利用するなどして、それぞれの会社には内緒でフルタイムの副業をいくつも掛け持ちするような事例が報じられています。しかし、勤務時間とは会社から拘束される時間であり、勤務時間中はその会社から専有財産と見なされて然るべきです。フルタイムの副業を掛け持ちすれば、必然的に勤務時間は被ることになります。それは、同時刻に2つ以上の会社に専有財産として拘束する権利を付与するという矛盾を生み出します。
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