その差は8倍 日本プロ野球と米メジャーリーグ、なぜ市場規模に差がついたのかMLBは市場規模10倍に成長(3/3 ページ)

» 2023年03月19日 08時08分 公開
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放映権料でも天文学的大差 スポーツは有料会員獲得の“鉄板”

 スポーツビジネスの観点から分析すると、放映権料にも触れなくてはなりません。「失われた30年」の間に、NPBはMLBに対して、特に放映権料で天文学的に大きな差をつけられてしまいました。これは、上記で取り上げたJリーグの欧州サッカー比較でも同じことが起きています。

photo スポーツビジネスにおいて放映権の話題は欠かせない(提供:ゲッティイメージズ)

 ここで「ダイヤモンドZai」が22年12月6日に公開した記事の内容を紹介します。東大卒の元プロ野球選手で、「スポーツ経営学の権威」と呼ばれる桜美林大学の小林至教授は記事内で「MLBの売上高のうち、約半分の7500億円は放送権料」と指摘しています。

 拡大成長を続ける米国は「世界最大」の経済大国であり、メディア大国でもあります。世界最高峰の広告市場、有料テレビ市場、スポーツビジネス市場も抱えており、名実とも“世界最強”の国です。

 それ故に、テレビ会社、メディア会社、インターネット会社間の競争が激しく、視聴率が稼げることから、有料サービスの会員数増加の鉄板コンテンツとしてスポーツの放映権は、今も昔も人気があります。

photo スポーツの放映権は有料サービスの会員数増加の手段として人気(提供:ゲッティイメージズ)

 厳しい競争の中、人気スポーツの独占放映で差別化を図るため、放送権料も右肩上がりに成長しているのです。この放映権料高騰が、先に棒グラフでも見た、MLBを始めとする4大スポーツ(野球・アメリカンフットボール・バスケットボール・アイスホッケー)の急成長を支えたのです。欧州サッカーも同じ道を歩み、過去30年で、急成長を遂げました。

日本は「失われた30年」で放映権料低迷

 残念ながら、先に述べた「失われた30年」という日本経済の低迷もあり、日本では、米国や欧州と比べて、放映権料がほとんど伸びていません。NPBもJリーグも同様です。

photo 失われた30年による経済低迷は、日本のスポーツビジネスにも影響を与えている(提供:ゲッティイメージズ)

 もちろん、MLBとNPBのビジネス規模でここまでの差がついたのは、各国の経済状況だけではありません。MLBや各チームの経営努力があったことは言うまでもありません。

 次回は「米国内とグローバル両方における成長戦略」「経営とマーケティングの『プロフェッショナル』によるプロ経営」「多様なプロ人財によるテクノロジー活用とイノベーション加速」などの観点からMLBを分析します。

書き手:岡部 恭英(おかべ・やすひで)

UEFA(欧州サッカー連盟)専属マーケティング代理店「TEAMマーケティング」シニアバイスプレジデントAPAC(アジア・パシフィック)代表。

1972年大阪府生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後の96年太知に入社。東南アジアや米国シリコンバレー勤務でエレクトロニクスやIT関連ビジネスに関わった。2006年英ケンブリッジ大学院でMBA取得後、TEAMマーケティング入社。欧州CLに関わる初のアジア人として、ヨーロッパ、中東北アフリカ、アジア地域での放映権やスポンサーシップビジネスに従事。21年から現職。スイス在住。

他にもJリーグアドバイザー、NewsPicksプロピッカー、日本スポーツビジネス大賞審査委員、Boardwalk顧問、Halftimeアドバイザーなど。慶大体育会ソッカー部出身。

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