外食や小売など実店舗を持つ企業は拡大路線へ流れがちだ。当初は「ブランド価値を維持するために、あまり店は増やしません」「信頼関係を築いた限られたオーナーとのみ契約を締結します」などと言うが、気がつくと全国に店があふれかえっている。「拡大をすることが成長だ」と考えるからだ。
しかし、そのような数を増やしていくビジネスモデルは、人口が減少していくこの日本ではどこかの規模で限界になる。しかも、高価格帯でそれをやるとブランド価値も地に落ちるのでダブルパンチで苦戦する。
では、人口も減って賃金も上がっていないこの国で、贅沢品を売っていくにはどうすればいいのかというと、店の「数」ではなく「質」を高めて勝負していくしかない。つまり、コンビニや牛丼チェーンなどと同じ土俵に立つのではなく、店舗数は最低限に抑えつつブランド価値を高めて、富裕層や海外市場に狙いを定めていくしかないのだ。
「乃が美」も「いきなり!ステーキ」もネットやSNSでは「高い」と叩かれているが、実はそれは30年も賃金が上がっていない「安いニッポン」だからだ。
ここまで苦戦するとなかなか厳しいが、両社には海外展開やブランド価値向上に力を入れるなどして、ぜひかつての勢いを取り戻していただきたい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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