一方近年では、各鉄道会社、とくに私鉄は、利用者が長く住みたいと思うような「選ばれる沿線」を目指している。元祖となったのは東急グループだが、他の私鉄もさまざまな取り組みをしている。
各社ではマンションや土地の分譲、商業施設の充実だけではなく、保育所の設置や葬儀場の開設など、沿線で何でもそろうようになっている。
そうした中で、相鉄グループも「選ばれる沿線」を打ち出した。相鉄はJRや東急との直通を前にして、新しい鉄道車両を「ヨコハマネイビーブルー」にするなど、イメージアップのための「相鉄デザインブランドアッププロジェクト」に取り組み、あわせて商業施設の充実などにも乗り出した。
19年11月にはJR東・埼京線との直通運転を開始し、念願の都心への乗り入れを果たした。相鉄はこれまで東京に乗り入れる路線網は有しておらず、必ず横浜まで出て、そこからJRなど他社路線を使って都心に向かう必要があった。この直通運転開始で、相鉄の存在感が東京圏でぐっと高まることになる。
そして3月、相鉄は新横浜を介して東急と直通することになった。
東急目黒線に直通する列車は東京メトロ南北線方面や都営三田線方面へ、東急東横線に直通する列車は東京メトロ副都心線を経て、東武東上線へ。これに既存の東京メトロ副都心線を中心とした鉄道ネットワークを組み合わせて、大きな鉄道ネットワークとなる。このように、相鉄は「選ばれる沿線」となるために、他社と協力し共存共栄を目指すこととなった。
今回の相鉄・東急新横浜線開業は相鉄側だけではなく、東急側にとってもメリットは大きい。東急線沿線から東海道新幹線への乗換駅である新横浜に直行でき、また相鉄線方面に用事がある人でも横浜駅での乗り換えが不要になった。分かりやすいのが、二俣川にある免許センターへのアクセス向上だ。このように、鉄道会社の鉄道事業においては、共存共栄モデルが企業・利用者双方にとって「最適解」といえないだろうか。
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