水素の供給自体が赤字で、供給量を増やすのが難しかったのもある。またこれまで水素ステーションで供給してきた水素は天然ガスから取り出したものであり、生産時にはCO2を排出してきたから、現実にはゼロカーボンとはいえないエネルギーだったことからも、積極的に使用量を増やすのもためらわれる。
しかしどうせ補助金を投入するなら、ダラダラと続けて利用しにくい状況を続けるのではなく、いつ水素の供給が潤沢になっても対応できるようにしておくべきだろう。
人柱となってFCVを購入しているユーザーが、水素ステーションの位置や営業時間を常にチェックして、それを優先した走行スケジュールを組まされているのでは、普及しようがないではないか。
そんな閉塞感のある水素利用に風穴を開けようと奮闘しているのは、トヨタだけではない。2023年1月に開催された展示会「オートモーティブワールド」では、トヨタが開発した超小型EV「C+Pod」を利用した水素利用のモビリティをベンチャー企業が持ち込んでいた。
これはEVであるC+Podに燃料電池を組み合わせるもので、水素の供給は水素吸蔵合金を内蔵したカートリッジによる交換方式を採用している。カートリッジの重さは9キログラムほどで、女性でも普通に取り扱えるサイズと重量であり、1本で100キロメートルほどの航続距離を確保できるという。
つまり日産「サクラ」のように、1日の走行距離がそれほど多くない使い方を想定しており、カートリッジ交換であれば急速充電よりもさらに利便性が高い。しかもC+Podは自治体などが使用したリースが終了し始めており、その車両の再活用を想定しているそうだ。
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