クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

トヨタが奮闘する燃料電池は、再び脚光を浴びるのか高根英幸 「クルマのミライ」(2/6 ページ)

» 2023年03月31日 08時30分 公開
[高根英幸ITmedia]

 水素の供給自体が赤字で、供給量を増やすのが難しかったのもある。またこれまで水素ステーションで供給してきた水素は天然ガスから取り出したものであり、生産時にはCO2を排出してきたから、現実にはゼロカーボンとはいえないエネルギーだったことからも、積極的に使用量を増やすのもためらわれる。

 しかしどうせ補助金を投入するなら、ダラダラと続けて利用しにくい状況を続けるのではなく、いつ水素の供給が潤沢になっても対応できるようにしておくべきだろう。

 人柱となってFCVを購入しているユーザーが、水素ステーションの位置や営業時間を常にチェックして、それを優先した走行スケジュールを組まされているのでは、普及しようがないではないか。

水素ステーションの建設はガソリンスタンドのおよそ2倍、4億円程度が必要だとされる。さらに防爆への対策や敷地面積の確保など規制は厳しく、なかなか建設が進まない。補助金だけでは採算が取れないのであれば、いっそ国営化してはどうだろう(写真picture cells - stock.adobe.com)

 そんな閉塞感のある水素利用に風穴を開けようと奮闘しているのは、トヨタだけではない。2023年1月に開催された展示会「オートモーティブワールド」では、トヨタが開発した超小型EV「C+Pod」を利用した水素利用のモビリティをベンチャー企業が持ち込んでいた。

 これはEVであるC+Podに燃料電池を組み合わせるもので、水素の供給は水素吸蔵合金を内蔵したカートリッジによる交換方式を採用している。カートリッジの重さは9キログラムほどで、女性でも普通に取り扱えるサイズと重量であり、1本で100キロメートルほどの航続距離を確保できるという。

 つまり日産「サクラ」のように、1日の走行距離がそれほど多くない使い方を想定しており、カートリッジ交換であれば急速充電よりもさらに利便性が高い。しかもC+Podは自治体などが使用したリースが終了し始めており、その車両の再活用を想定しているそうだ。

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