17年、東芝は上場廃止寸前だった。発端は、06年の米国原発企業「ウエスチングハウス」の買収(M&A)である。東芝にとって、とてつもなく高い買い物となった。評価が過大だった上、「隠れ債務」があったからだ。結果的に、この買い物の失敗が東芝を苦しめることとなる。
当時のウエスチングハウスの時価(公正価値)は約3000億円。東芝は、これを約6500億円と、倍以上の価格で購入している。一般的な買い物であれば、差の3500億円は「損」と考えるのではないだろうか。
ただ、東芝が採用している米国会計基準では「損」ではなく、「将来の利益の源泉」(のれん)とみなして資産に計上する。「損」(減損)とするのは、定期的に行うテストで価値低下が分かった時だけ。それ以外は「損」ではない。利益に影響しないため、原発事業は好調に見える。「できれば損にせず、このまま資産として塩漬けにしておきたい」。そんな動機付けが企業側に働く。
結局、東芝は12年・13年とウエスチングハウス(単体)が2期連続で赤字となり、価値が低下しても、決算上「損」としなかった。「損」として決算に反映したのは、16年になってから。15年11月に、日経ビジネスがスクープ記事を掲載した後だ。
この時に計上した「損」の額(減損額)は約2500億円。結果、16年度は純損失4600億円の赤字に落ち込む。しかしこれで終わりではなかった。隠れ債務があったのだ。
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