パスファインダーズ社長。30年にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、新規事業・新市場進出を中心とした戦略策定と、「空回りしない」業務改革を支援。日本ユニシス、アーサー・D・リトル等出身。一橋大学経済学部、テキサス大学オースティン校経営大学院卒。
トヨタ自動車の佐藤恒治新社長はこの4月7日の新体制の方針説明会で、2026年までにEV(電気自動車)10車種を新たに投入する計画と、EVの世界販売を年間150万台とする中間目標を発表した。「全方位戦略」は堅持するとしながらも、EVに本腰を入れることを改めて宣言した格好だ。
トヨタは2030年までに30車種のEVを投入し、世界での年間EV新車販売を350万台にする目標を2021年12月から掲げている。そして高級車ブランド「レクサス」で2026年を目標にEV専用のプラットフォームを開発することも、今年に入って発表している。レクサスでは2035年にはEV販売比率を100%にする方針だ。
トヨタのEV戦略には、充電インフラの整備も含まれており、EV用の高速充電器や普及型充電器などの充電設備を自社で開発し、EVの普及に貢献していくことを目指している。普及に関する課題を解決するため政府や自治体、充電インフラ事業者などと協力して取り組んでいく、とトヨタは強調している。
言い換えれば、日本でのEVの普及に関しては、EV本体の価格や走行距離もさることながら、充電設備の整備の遅れも大きな阻害要因であることを、トヨタ自動車としては強く認識しているということだろう。
日本政府も、日本の屋台骨を支える産業に対し母国市場が足かせとなる環境条件をいつまでも背負わせる訳には行かないこともあり、2030年までに公共利用できる充電器を15万基に増やす目標を掲げている(これは現在の5倍にあたる)。そのうち急速充電器は3万基に増やす方針とされる(これは3倍以上)。
実は2022年3月末時点での急速充電器数は8265基に過ぎない(ゼンリン調べ)。しかも前年同月からの増加数は372基と、随分と少ない。政府の補助制度の後押しもあってある程度までは増えてきていたのだが、近年は頭打ちなのだ。しかも充電器の耐用年数は8年なので、政府の補助を受けて設置された機器が更新期を迎えており、放っておけば設置台数は減ってしまいかねない。
EV自体の普及がなかなか進まないため利用者が増えず、一旦始めていた充電サービスを取り止める事業者も多いためと見られている。EVの普及と充電設備の普及は、典型的な「ニワトリと卵」の関係になっているのだ。
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