社員が学生時代に借りた奨学金の返済を、勤務先の企業が福利厚生の一環として、一部または全額を返済する制度の導入が全国の企業に広がっている。企業と社員の双方にとって、どのようなメリットがあるのか。
「卒業後の奨学金返済に苦しむ若者の助け舟になりたいと考えた」
3月から制度を導入した神戸市の工場設備商社「吉岡興業」の担当者はこう話す。同社は、社員が在学中に受けた奨学金の一部を肩代わりする「奨学金返済負担軽減支援制度」を導入。対象は、正社員として1年半勤務する30歳までの社員で、月額1万2500〜1万5000円を支援。最大5年間で90万円を上限に支給する。
給与として支払うのではなく、同社が日本学生支援機構に直接返済する。
企業の奨学金返還支援(代理返還)制度は従来、各企業が社員の給与などに返済分を上乗せして支援していたが、2021年4月から制度が改正され、企業が奨学金を貸与する日本学生支援機構に直接送金できるようになった。
この制度は社員と企業の双方にとってメリットが大きい。
社員にとっては奨学金返済の負担が減る。企業が直接機構に送金することで、通常の給与と返済額が区分され、返済分の所得税なども原則かからない。
企業にとっても、代理返還は社員の奨学金の返済にあてるための給付となるため、給与として損金算入ができ、法人税の減税につながる。制度を利用する企業が希望すれば、機構の公式Webサイトに掲載され、大学などに紹介される。人手不足が課題となっている企業にとっては、大きな宣伝効果が期待できる。
機構によると、制度を導入している企業は4月1日時点で700社を超えるという。
奨学金の返済は若い世代を中心に大きな負担となっている。労働者福祉中央協議会(東京都千代田区)が3月に公表した、貸与型奨学金を返済する男女2200人を対象に実施した調査結果によると、4割弱が奨学金返済が「結婚に影響している」と回答。3割強が「出産」「子育て」「持ち家取得」に影響していると答えた。
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