「東急の自動運転バス」実証実験2回目、真の目的と課題が見えた杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

» 2023年04月21日 10時13分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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いまはまだ「手段」ではなく「目的」

バスの定員とは関係なく、予約定員は6名だった。希望に応じて増便、続行運転が必要かも

 多摩田園都市の価値を高める。その視点で自動運転バスを振り返ったとき、今回の実験で課題も見えてきた。「乗客募集開始から3日間で満席」は良いことだろうか。住民にとって、このようなバスは「今日、午後から買い物に行きたいな」というタイミングで予約したい。しかし10日も前に予約で埋まる。これは本来のあり方ではないと思う。今回は「自動運転バスに乗ること」自体が目的となっている。前日予約が適切ではなかったか。

 バスのメリットは増発、増便が容易なことでもある。「週末、イベント会場に行きたい」となれば、多くの利用者が予測される。増便の必要がある。今回は自動運転バスが1台しかないから仕方ない。いずれ増発、続行運転の実証実験も必要になるはずだ。

 東急の実証実験は、第1段階で「運行の安全」、第2段階で「乗客の安全」が主だったと考えられる。「サービス」についてはもう少し先の課題かもしれない。東急が多摩田園都市で自動運転バスを正式サービスできることを願って、引き続き観察したい。

今回の実証実験の目的(報道資料より)

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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