ゲームの市場規模は約10年で2倍に! コンテンツ産業をさらに成長させる4要素とは戦略を考える(3/3 ページ)

» 2023年04月27日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]
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成功するためのポイントは?

 リスクをうまく分散させ、ヒット作を生み出していくプロダクトポートフォリオ(製品の組み合わせ)を再構築し経営資源の分配を最適化しなくてはなりません。

 コンテンツ事業を成功に導くために今後必要となるポイントを以下に整理します。

(1):新たな投資モデルの構築

 映画の製作委員会のように著名な原作者や監督、俳優の作品に投資するだけではなく、新たな可能性を秘めている未来のヒット作に多く投資し、リターンを得るモデルを構築する必要があります。

 多額の製作コストを要さずとも斬新なストーリーや撮影手法、驚きのある仕掛けを提供することで低コストハイリターンを実現するモデルです。ただし、ヒットしないリスクももちろん抱えているため、投資の目利きと複数作品へ投資分配をするバランスは求められます。

 この投資スキームにweb3の技術を活用し、幅広く少額投資を募り、ステークホルダーに収益を分配するモデルも今後は要注目でしょう(ただし、セキュリティトークンに該当した場合の金商法への対応などは必須)。

(2):有望な原作者や監督を発掘するプラットフォーム

 クラウドファンディングのモデルは、日本においても一定の普及をしました。リターンを求める投資の観点よりも参加型で応援することに意義を見い出す人達が多く集まった結果、クラウドファンディング市場は活性化しました。それと同じように、市場に眠っている新たなスター作品を世に送り出すため、応募から作品の製作支援、審査・評価、資金支援、告知に至るまで一連の流れをトータルで支援する仕組みが必要とされます。

 小売業の商品バイヤーが地方の製造者のWebサイトを見て商品発掘をしているのと同じように、コンテンツについても原作者、製作者、出資者、流通プレーヤーをマッチングするプラットフォームが市場の活性化にも大きく貢献する可能性を秘めています。

(3):VR、AR、メタバースにおけるコンテンツチャネルのさらなる拡大

 リアル店舗の空間にスマートフォンをかざすとコンテンツが現れたり(AR技術の活用)、VRグラスをかけることで没入型の体験が可能となったりするなど、コンテンツを楽しむ・購入する場所は今後さらに拡大していくことが予想されます。メタバース空間の構築には依然として時間を要する中、リアル空間にバーチャルコンテンツを付加するモデルはスピーディーに展開しやすく、本年からさらに取り組みが増えていくことでしょう。

(4):パーソナライズと脱パーソナライズのバランス

 一人ひとりの好みやコンテンツの購買履歴に合わせてレコメンドするデータ活用の高度化は今後も進んでいくことでしょう。ずっと声高に必要性が叫ばれている「パーソナライズ」は今後も重要視されていきます。

 しかし、上記の(1)(2)で指摘したようなモデルが普及したときには、新たな作品に多くの人が出会えるように広く告知する展開も必要になります。よって、精緻に個々のニーズを捉える動きと、ダイナミックにマスに展開する動きの両面が求められることになります。

 食やアパレル以上に、コンテンツはどのようなものが心に響くのか未知数な部分があるため、それを履歴などで狭め過ぎないということも忘れてはなりません。

 コンテンツ生成型のAIとして世界中から注目を集めているChatGPTが脚本や小説を書いて話題となることもあることでしょう。そのような技術だけでなく、ストリーミングや動画配信市場の拡大など、私たちはコンテンツを乗せるメディアや手法に着目しがちです。

 しかし、大切なことはそこに乗っていくコンテンツが人々を喜ばせ感動させる品質であるかどうかということです。

 いかに有望な作品を発掘して世界に送り出すことができるか。そこには資金やシステム構築、マーケティング力など幅広い要素が求められます。日本発で世界に誇れる作品を数多く展開できるよう、資金、マッチング、マーケティングをトータルサポートする仕組みがまさに今求められています。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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