「縮むニッポン」に適したビジネスは何か “盗まれない”最強の産業スピン経済の歩き方(7/7 ページ)

» 2023年05月09日 10時45分 公開
[窪田順生ITmedia]
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人が減ることをチャンスに

 「観光」と聞くと、コロナ禍や自然災害などに左右される不安定な産業だというイメージを抱く人も多いだろう。しかし、UNWTO(国連世界観光機関)の統計を見ても、長期的に国際観光客到着数と国際観光収入は右肩上がりが続いている。

 リーマンショックやコロナ禍で一時期落ち込むようなことがあっても、しばらくすると復活する。このように安定的に成長している産業は少ない。実は観光というのは「危機」に強いので、国が成長していくうえで最強の産業なのだ。

 しかも、「ものづくり」と違って競合国に盗まれることもない。テクノロジーは技術者を引っ張って、投資をすれば追いつけるが、日本の美しい自然、そして伝統や歴史、地域の人々はどこの国でも盗めない。

 AIやロボットがどれほど進化したところで、観光がなくなることはない。人間が実際に遠い地を訪れるために旅をして、そこで異文化の人々と触れ合って、現地でしかできない体験や食事をしたいというのは人類の根源的な欲求だからだ。リアルな擬似体験を仮想空間でできるようになってはいるが、やはり「現地に行く」という体験には敵わない。

 「人口減少」と聞くと、何かと暗いイメージがつきまとうが、実は人が減れば自然環境は良くなるし、限られた資源を用いて効率的に生活をしなくてはいけなくなるので、大量生産大量消費社会よりも成熟していく。究極のSDGsなのだ。

 これからのビジネスパーソンは、「人が減る」ことを大きなチャンスと捉えるような発想の転換が必要なのかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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