現在、日本全国にはりめぐられされたインフラの多くは、人口が右肩上りで増えていく時代に整備された。インフラを保守点検する人員も、そのインフラを利用する住民も増えていたので、道路も水道も次々と整備されて、外食チェーンやコンビニも全国津々浦々に広がった。いわば、1億2000万人という人口規模にフィットしたインフラだった。
しかし、これからの日本は毎年、鳥取県の人口と同じくらいの人が消えて、70年には8700万人になる見込みだ。4000万人が消えていくのに、1億2000万人用のインフラが維持できるわけがない。保守点検する人員もないし、利用者もいない。だから、これからの日本は、人口増で広げたインフラを小さく畳んでいく、ということがメインテーマになっていく。
そこで問題となるのは、どうやってインフラを畳むかということだ。人間は一度味わってしまった「便利さ」はなかなか捨てられないので、インフラの「質」を落とすということはできない。蛇口をひねれば当たり前のように水が出て、いたるところで電話が通じてWi-Fiが飛んで、ネットでポチッとしたものが自宅に届くこの便利なインフラを手放すことは不可能だ。
しかし、現実的に人口が減るので現状維持はできない。となると、残された道は「範囲」を狭めていくしかない。市街地でも農村地帯であっても、住民はなるべく集まって生活をしてもらうのだ。
このような「生活エリアの集中化」が進んでいけば、電気水道などの生活インフラや、医療や介護などの公共サービスも少ない人員で効率的に回せる。これは荒唐無稽な話でもなんでもなく、1990年代から人口減少対策のひとつである「コンパクトシティ」という構想がこれにあたる。
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