徒然研究室の分析によると、「アイドル」の演奏時間に大きなツイートのスパイクが起こっていることが良く分かります。
実はYOASOBIは、YouTubeでも過去に音楽配信ライブを行っており、今回も同様にYouTubeで実施するという選択肢もあったはずです。
参考記事:28万人をライブ配信に動員したYOASOBIに学ぶ、ネット時代の新しい音楽の拡げ方)
ただ、いまや音楽の海外展開において、TikTokが重要なプラットフォームであるのは間違いありません。今回の「アイドル」は、ダンスや切り抜き動画など、明らかにTikTokとの相性が良い楽曲となっていますし、あえて今回はTikTokをパートナーに選択したということでしょう。
その効果は間違いなく出ており、『アイドル』を使ったTikTokの動画投稿数は既に世界で6万本を超えています。
19年にリリースされたYOASOBIの代表曲『夜に駆ける』を使ったTikTok動画が現時点で14万本、2021年リリースの『怪物』が5万8千本であることと比較すれば、まだ配信開始から1か月経っていない『アイドル』の動画の投稿数の多さが伝わるかと思います。
当然、今後TikTok上の動画の数はますます増えていくはずで、それによって海外でさらに認知が上がる可能性があります。グローバルチャートでの14位は十分に快挙と言えますが、実はYOASOBIの「アイドル」はまだこれからグローバルチャートでさらに上位に入っていく可能性が十分あるわけです。
音楽ジャーナリストの柴さんによると、実はYOASOBIのAyaseさんが、年明けに「新年早々New Jeansの新譜にやられたなこれ。良すぎて悔しくなった。今年は明確に明瞭に、勝ちにいく。」とツイートされていたことが、今回の伏線である可能性が高いようです。
『アイドル』の楽曲は、原作の『推しの子』の芸能界における表と裏のある世界感が見事に反映されており、原作ファンを裏切らない完璧な楽曲になっています。
ただ音楽のトーンは、明らかに去年までのYOASOBIの印象を裏切るつくりになっており、その変化に驚く方も少なくないはずです。ある意味、今回の「アイドル」は、Ayaseさんが現状のYOASOBIの成功に満足せず、世界で「勝ちにいく」という姿勢が明確に表れている作品ということが言えるのかもしれません。
Ayaseさんの頭の中には、日本の音楽業界が海外で成功するための方程式が徐々に形作られているのでしょう。
徒然研究室の分析によると、今回の『アイドル』の大ヒット後も、海外の視聴比率は5割近くを維持しており、世界中で『アイドル』が聞かれていることが良く分かります。
もともとYOASOBIは日本でもトップクラスに海外のファンが多いアーティストですが、今回の『アイドル』はそのファンの数をまた一段上のステージに押し上げる可能性が高いように感じます。
なにしろ『推しの子』はシリーズ放映がはじまったばかり。アニメのファンが海外でも口コミで広がれば、さらに『アイドル』のファンやYOASOBIのファンが増える可能性があります。
今回、YOASOBIが日本の音楽が世界でヒットするための扉の1つを開けてくれたのは間違いないと言えるでしょう。まずは、『アイドル』がどこまでその記録を伸ばしてくれるのか、楽しみにウォッチしたいと思います。
noteプロデューサー/ブロガー
新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログとSNSのおかげで人生が救われる。その際の経験を元に、書籍「普通の人のためのSNSの教科書」(朝日新聞出版)を出版。noteやSNSを活用したビジネスパーソンのキャリア構築や、企業の広報やマーケティングのサポートを行っている。
Twitter:@tokuriki
公式サイト:徳力基彦(tokuriki)
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