東海道新幹線の運休で大混乱、JR東海の対処は適切だったか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

» 2023年06月10日 09時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 問題は自宅近くにみどりの窓口を備えた駅がないことだ。手続きをするなら乗車駅の新横浜駅だ。しかしそこで夕方発の指定席を取れたとして、10時半から夕方までの時間をどう過ごそうか。それなら自由席に並んだほうが早く乗れるかもしれない。JRの特急列車の指定席は、乗り遅れた場合も後続列車の自由席を利用できる。乗り遅れではないし、大雨災害だから手数料なしで払い戻して自由席特急券を買い直してもいいけれど、差額はたった数百円だ。手間をかけるより早く並ぼう。

 いつものとおり、新横浜駅篠原口のコインパーキングに自動車をとめる。東海道新幹線のプラットホームが見える。運行開始は12時過ぎというのに、もう自由席の乗車口付近は大勢の人が並んでいた。改札内コンコースはそれほどでもないけれど、プラットホームは大混雑だ。

コインパーキングから新幹線プラットホームを見る(筆者撮影)

 駅の案内放送によると、12時から13時まで、定期列車のほかに全列車自由席の新大阪行き「のぞみ」を5本運行するという。なるほど、今朝までに運休を決める一方で、臨時列車の手配もしてくれた。必要な手当てをしていると感じた。

 私は当初、5号車付近に並んだ。「のぞみ」の自由席は1〜3号車、「ひかり」の自由席は1〜5号車。「のぞみ」より「ひかり」のほうが遅いし人気もなかろう。そして私は岡山に行くから、新大阪止まりの「のぞみ」より、岡山行きの「ひかり」のほうが助かる。途中の停車駅が多ければ降りる人も多く、早く座れるかもしれない。

 12時を過ぎて、定期列車の「のぞみ」が到着。しかし東京駅と品川駅ですでに満席状態だ。駅の業務放送で「乗車率160%」と聞こえた。新幹線は重量を計測して乗車率を算出するから、目視より正確だ。その乗車率160%とは、自由席も指定席も通路やデッキに人が詰まっている状態だ。帰省ラッシュのニュースで聞く数値。こんな状態だったのか。こんな列車に乗っても帰りたい。故郷の魅力はいかに大きいか。

 「ひかり」のほうが空いているだろうという期待は打ち消された。「ひかり」も「こだま」も大混雑だ。どちらも「のぞみ」に追い越されるはずだけど、この状態では「のぞみ」でさえいつになったら乗れるか分からない。列の前にいるなら、いま来た列車に乗るのが正解という考え方。たぶんそれは正しい。

新横浜駅の発車案内。定期列車の間に「全車自由席」が2本ある(筆者撮影)

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