東海道新幹線の運休で大混乱、JR東海の対処は適切だったか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)

» 2023年06月10日 09時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

「悪天候のため」とはいわない潔さ

 もうひとつ、残念なことは「デッキ地蔵」だ。指定席車両の座席間の通路に立つ人も多い。これは指定席を予約している人も、その人を見下ろす形の立ち客も気まずい。しかしこんなときはお互い様だ。ところが、ある列車は通路に立つ人がいないにもかかわらず、誰も乗り込めなかった。デッキで立ちふさがった人がいたに違いない。通勤電車で扉付近に立って乗降の邪魔になる人を「ドア地蔵」と私は呼んでいるけれど、新幹線や特急列車では「デッキ地蔵」と呼びたい。

 きっぷのルールでは、自由席利用者は自由席車両のみ。自由席がデッキまで満員の場合は車掌の裁量で指定席のデッキ利用も認められる。しかしこんな時は指定席通路も認められるべきだし、ほかの車両はほとんど通路も使われていた。ここは駅員さんがデッキ地蔵にひと声かけてほしかった。駅員さんも大変だと思うけれども。

 行列が少し動くようになると、乗車口で駅員さんが「指定席券を持つ人」を募り、先に案内するようになった。その列車の指定席を持つ人だろうと思うけれど、乗ったままデッキに立つ人もいて、もしかしたら私のように運休した列車の指定席券を持つ人を優遇してくれたのか。それは定かではなく、私は行列を崩したくないのでそのまま待っていた。

12時50分になってもこの状態(筆者撮影)
到着した時点でデッキまで満員だった(筆者撮影)

 印象的だったことは、駅員も車掌も、案内放送で「悪天候のため」とはひと言もいわなかった。「本日はお客様が大勢いらっしゃいます」「混雑でご迷惑をおかけしております」など、事実のみ伝えている。これは潔いというかカッコよかった。悪天候が原因なんて、ここにいる誰もが知っていることで、言われなくても分かっていることをわざわざ言われたらむしろイラだつ。それを分かっているのだろう。ひたすらお詫び、クレームを聞き続け、安全確認に気を使う。大変な仕事だと思った。

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