驚きの高騰ポケモンカード なぜ“カード1枚”にそこまで価格がつくのか廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(3/4 ページ)

» 2023年06月15日 07時00分 公開
[廣瀬涼ITmedia]

 前述した通り、トレカは1パック200円前後で購入でき、その中から価値が高いカードを引くことができれば、まるで宝くじに当たるようなものだ。また、そのカードの価値の変動を予測し、カードを安いときに入手し、高いときに売りに出せば、まるで金融投資のように利益を得ることができる。

 購入したパックを寝かせておいて、数年後に未開封でプレミア価格で販売することで利益を得る者もいる。他にも「オリパ」と呼ばれる、個人やトレーディングカードショップが独自に複数のカードを封入して販売する非公式パックもある。福袋のように「○○が当たるかも?」「○○円以上の価値あり!」といったうたい文句で販売しているが、その信頼性や健全性は担保されてはおらず、実際にそれだけの価値があるか分からないものが高額で取引されていることも問題になっていた。

 元手があまりかからないという点やフリマアプリなどで手軽に販売できることもあり、ポケカは人気の転売商材となった。新しいシリーズが発売されるたびに、老若男女が押し合いへし合いして買い求める様子や、転売対策の内容が話題になる。楽しみにしている子供たちの手に届かないという悲痛の声が、残念ながら定着してしまっている。

 現状、市場に供給されるポケカの数が需要に追い付いてはおらず、1次流通から入手することが困難になった結果、転売や窃盗といった負の側面を生んでしまっている。もちろん、市場に供給されるカードの数を増やせばいいわけで、事実20年ごろからポケモン社も転売対策として生産体制の強化や不足商品の再生産に力を入れてはいる。しかし単にカードを大量発行してしまうと、「レアカード」が「レア」ではなくなってしまい、ポケカブランドに傷をつけかねない。

 このような中、ポケモン社とメルカリは6月13日、包括提携を結んだと発表した。ポケモン社は新商品発売の際にメルカリに情報を提供し、メルカリは公式アプリやブログを使って新商品発売時の注意喚起を行う、といった旨の内容だ。また、両社が合意した特定の商品を対象に、メルカリ利用規約に違反する出品の削除対応なども行う。

photo メルカリとポケモン社の提携内容=ニュースリリースより
photo 6月16日に発売した新商品の強化拡張パック「ポケモンカード151」(ポケモンカード公式サイトより)

 ポケカを巡っては、フリマアプリでの偽造品・模倣品の出品や出品者が希少なカードが入っているパックを抜き取って販売するといった行為が確認されているからだ。この提携は多少の抑止力にはなるのかもしれないが、例えばコピーブランド商品などを扱うユーザーは深夜から早朝までの時間しか出品せず、運営の目をかいくぐるなど巧妙な手口を使用する。過去にもメルカリは、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を運営するユー・エス・ジェイと提携し、高額転売対策を行ってはいたが、発売日に新グッズが大量に出品される状況に変化は見られない。

なぜ、不正転売はなくならないのか

 「正当な価格で手に入るはずの機会を失ってしまう消費者」と「欲しいと思っている消費者に商品が行きわたらない小売業者」がいるなど、不正転売によって多くの人々が不便を被っているにもかかわらず、どうして不正転売はなくならないのだろうか。

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