驚きの高騰ポケモンカード なぜ“カード1枚”にそこまで価格がつくのか廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(4/4 ページ)

» 2023年06月15日 07時00分 公開
[廣瀬涼ITmedia]
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 理由は明確で、不正に価格が吊り上げられた商品を買う人がいるからである。欲しいものがあれば絶対に手に入れたいと思うのは、どのコレクターの心理にもあり、手に入るならば値段は度外視と考える者も少なくはない。

 また、トレーディングカードなどその価値が変動しやすいグッズは、価値が高騰する恐れがある。正規取引価格でなくともそのとき買わなかったことで生じる未来の損失までも考慮し、購入に踏み切ることもある。時間や労力をかけて探し回るくらいなら、目についたときに高くても確保しておくという一期一会の性質が、消費欲求に働き掛けているともいえるだろう。

 このため、消費者側のどうしても欲しいという欲求に歯止めをかけることは難しく、ポケカそのものの投資的な魅力がなくならない限り、根本的な解決にはならないと思われる。実際に利益を得た経験や取引実績、誰でも手軽に始められるという参入障壁の低さ、市場の大きさは、投資目的にポケカを見ている人からしたらまだまだおいしい市場といえるだろう。

photo メルカリによる注意喚起=ニュースリリースより

 もうヴィンテージカードやプレイで使用することがルール上できないカードが高騰してしまうのは致し方ないことだが、少なからず今後販売されるものに関しては「欲しい人のもとに渡らない」という状況が改善されない限り、本当に欲しい消費者を2次流通業者に向かわせてしまう。その結果、2次流通市場参入自体の魅力を上げてしまい、ますます手に入りにくくなるという状態を生んでしまうだろう。

著者紹介:廣瀬涼

1989年生まれ、静岡県出身。2019年、大学院博士課程在学中にニッセイ基礎研究所に研究員として入社。専門は現代消費文化論。「オタクの消費」を主なテーマとし、10年以上、彼らの消費欲求の源泉を研究。若者(Z世代)の消費文化についても講演や各種メディアで発表を行っている。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」、TBS「マツコの知らない世界」、TBS「新・情報7daysニュースキャスター」などで製作協力。本人は生粋のディズニーオタク。瀬の「頁」は正しくは「刀に貝」。

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