まず、ホンダは、この頃にはすでに世界的な自動車メーカーに成長しています。「世界最高の技術」をF1で喧伝する必要性はかつてほどありません。
また、ホンダのビジネスは、米国市場がメインで、欧州での割合はそれほど大きくありません。それに対して、F1は欧州で人気のレースであり、米国での人気はイマイチ。しかも、F1への参戦コストは非常に高額で、費用対効果を考えると、F1参戦のメリットはかなり微妙です。そのうえ、第2期の参戦でホンダは黄金時代を築いたため、それを超える戦績を得るのは非常に難しくなっています。
しかし、それでもホンダは、F1への挑戦をやめませんでした。何度撤退しても、その度になんだかんだと再開しているのです。その理由は何かといえば、もう企業文化としかいいようがないでしょう。今回の26年のF1復帰について、三部敏宏社長は「ホンダは世界のレースに挑戦し、勝利することで成長してきた企業です」と説明しています。レースで成長してきた企業なんだから、レースに参戦するのは当然ということでしょう。
ちなみに、レースで経験を積んだエンジニアが、量産車の開発に貢献しているのもホンダらしい点です。近年、ホンダの大ヒットモデルである軽自動車の「N-BOX」を生み出したのは、浅木泰昭氏という人物です。
浅木氏は、ホンダの第2期F1で経験を積み、その後、開発責任者として「N-BOX」シリーズを世に送り出しました。そして、その後、第4期の後半にF1の開発に復帰し、近年のホンダF1活躍を実現しています。F1で鍛えられたエンジニアが、ヒット量産車を生み出し、そしてまたF1で活躍する。まさにF1がホンダの人材育成の場であることを、身をもって示しているのです。
26年からのF1の再挑戦も、将来のホンダを支える人材育成の場になることは間違いありません。「世界のレースに挑戦し、勝利することで成長してきた企業」であり続けるためにも、26年からのF1でもホンダは活躍してほしいものです。
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
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