デリカミニ絶好調 三菱がeKクロススペースの失敗から学んだこと鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(2/3 ページ)

» 2023年07月06日 07時00分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]

さっぱり売れなかったeKクロススペース

 実のところ、デリカミニは新型モデルであって、新型ではありません。「名称としては確かに新型」でも、その中身は20年3月に発売した「eKクロススペース」そのもの。違っているのは、前後のデザインと足回り(4WDモデルのみ)、悪路走行のための「グリップコントロール」「ヒルディセントコントロール」に、新制御が追加されたくらいです。新規モデルどころかフルモデルチェンジでさえなく、いってみればマイナーチェンジ相当という内容です。

【訂正:2023年7月7日13時49分 「グリップコントロール」「ヒルディセントコントロール」に関する表記の誤りを訂正しました。】

ek デリカミニ、中身は「eKクロススペース」そっくり(同社提供)

 なぜ、このようなことになったのでしょうか? その理由はシンプルで、eKクロススペースがさっぱり売れなかったからです。

新型車で売れ筋ジャンル、なのに売れない

 19年のeKシリーズの販売台数は約4万5000台でした。20年3月に発売したeKクロススペースとeKスペースは、どちらも売れ筋の背の高い&両側スライドドアのスーパーハイトワゴンの兄弟車。よりクロスオーバー風なデザインとなっているのがeKクロススペースです。

 ところが、新型車、しかも売れ筋ジャンルのクルマを投入したにもかかわらず、20年のeKシリーズの年間販売台数は、約3万3000台に減ってしまいます。21年は約3万4000台で、コロナ禍とはいえ低空飛行そのものです。ちなみに、同じスーパーハイトワゴンのベストセラーであるホンダ「N-BOX」は、コロナ禍であってもコンスタントに年間18万〜19万台を売り上げています。

ek eKシリーズの不調を横目に売れ続ける「N-BOX」(ホンダ公式Webサイトより引用)

 この体たらくは、三菱自動車の販売力の弱さもあったでしょう。ただ、個人的には名前がよくなかったと思います。三菱の軽自動車は、ハイトワゴンのeKワゴンを基本に、クロスオーバー版をeKクロス、そのEV版をeKクロスEVと名付けています。

 さらに、背の高いスーパーハイトはeKスペース、そのクロスオーバー版をeKクロススペースとしました。軽自動車である「eK」に、車型の「ワゴン」と「スペース」、それにクロスオーバーの「クロス」、さらに電気自動車である「EV」を組み合わせています。名前と形が一致する、とても合理的なネーミングです。

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